日本の味噌は、ゆでた大豆と塩と麹菌を混ぜ合わせ、桶などに入れて重石を載せて発酵、熟成させて作る独特の発酵食品である。
戦前は農家などでは味噌を家で作るのが当たり前で、その家に伝わる伝統的な作り方(大豆、塩、麹菌の配合具合や熟成期間等々)により、味噌の味や香りは千差万別であった。
よって、それぞれの家でできる味噌こそ最上であるという自負があるのは当然で、「手前味噌」という言葉ができた。
味噌が作られる時の主役は発酵を促す多くの微生物。よって、気配り、手入れがおそろかになると味噌が腐る(できない)。
「味噌が腐ると人が死ぬ」という諺は、「味噌を作る人の体調が悪く、味噌作りに専心できなくなった」からという意味と、「味噌が腐って、味噌が食べられないと、体調を崩しがちになる」ということを少々、誇張して「死」という言葉を使って表現したのであろう。
味噌には炭水化物、脂質や良質のタンパク質が含まれ、米を主食とする日本人に不足しがちなリジンやスレオニンなどの必須アミノ酸も補ってくれる。また、味噌には強い防腐作用があるので、魚や肉、野菜などの味噌漬けは、冷蔵庫のない時代の貴重な保存食だった。
「本朝食鑑」に、味噌は「腹中を補い、気を益し、脾胃を調え、心腎を滋(ま)し、吐を定(おさ)め、瀉(はらくだし)を止め、四肢を強くし、髭、髪を烏(くろ)くし、皮膚を潤し…病後のやせ衰えを壮にする…酒毒及び鳥魚獣菜菌の毒を解する」とあり、正に万能薬だ。
「味噌が腐ると人が死ぬ」も、あながち誇張とは言えないのかも。
◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は生島ヒロシ氏との共著「70代現役!『食べ方』に秘密あり」(青春出版社)。












