作家の大沢在昌氏(70)が18日、東京・千代田区の三省堂書店神田神保町本店で新刊小説「柩(ひつぎ)の狩人」(幻冬舎)のサイン会を行った。

 同作品は、闇社会を知り尽くす新宿署のアウトロー刑事・佐江を主人公にした警察小説。登場人物の強烈なキャラクターとスリリングな展開で累計240万部を突破する人気シリーズだ。

 第6弾となる今作では、新宿歌舞伎町の老朽化したビルで崩落事故が起き、10人が死亡したことから物語が始まる。犠牲者の中には、身元の確認が困難な謎の2人と、そこにいることが不自然な後輩刑事もいたことが判明。その足取りを追ううちに18年前の未解決事件にたどりつく。

 今回の新刊発売について大沢氏は「書き終えたのは2年前だから忘れてたよ。当然、他の連載も始まっているからね」と苦笑。

 それでも「人気のあるシリーズだし、発売してどういう反応があるのか、不安もあるし期待もある。でも、もう100冊以上書いているから。『やったぜ!』と燃えることもないし、かといって白けることもない。きっちり仕事をやりました」と率直な心境を明かした。

 シリーズは「北の狩人」「雨の狩人」など「○○の狩人」というタイトルになるのが特徴だが、今回の「柩の狩人」というタイトルは、前作「冬の狩人」(2020年)の時からすでにアイデアとしてあったという。

「最初に死んだ10人がいる。謎があるぞ、と。みんな柩に入っている。そこから死者の秘密を追うというのは考えていたね。次回作のアイデア? まったく考えていません。今回、売れなかったらシリーズをやめるかもしれない(笑い)」
 
 小説を執筆する時に悩むことはないといい、「今回も楽しく書いたよ。(主な登場人物2人による)2つの視点があるから、書いている方も気分が変わって煮詰まらないんです」。

 昨今はテクノロジーの進化が著しい。小説執筆にAIを使用する時代も到来している。実際、24年の第170回芥川賞を受賞した九段理江氏が、受賞作「東京都同情塔」で「全体の5%くらいは生成AIの文章をそのまま使っている」と発言して賛否を呼んだ。AIを駆使した小説を大沢氏はどう考えているのか。

「一概にAIが全部ダメとは言えないかな。小説として面白いか、優れているかがすべてだから。100%AIに書かせたならさすがに『ちょっと待て』となるけど、何割AIに書かせたかはわからないからね」

 そして「ギリギリ商品になるぐらいのレベルはできるかもしれない。でも、文学賞の候補になって『これはいい作品だね』と言われるほどのものをAIが作れるかどうか。今後はそういうテーマも出てくると思う」と語った。