【日本初の女性首相 鉄の女を目指す高市早苗#1】日本の憲政史上、自民党の高市早苗総裁が初の女性首相となった。長年、高市氏を取材しているノンフィクション作家の大下英治氏が緊急寄稿し、素顔や原点に迫る。安倍晋三元首相と高市氏の絆の深さはどのように育まれたのか――。(全3回)

 高市さんを最初に取材したのは今から30年ほど前、彼女が若手議員だったころです。

 無所属で国会議員となった高市さんの転機は、自民党入党後に、清和会に入会し、派閥のプリンスの安倍晋三元首相の知遇を得たこと。保守的な思想に共鳴したこともあって、高市さんはそれ以来、安倍さんと議員活動を共にして、支えていきます。

 森喜朗政権の支持率が低迷していた時は、安倍官房副長官を支えるために、山本一太さん(現・群馬県知事)や世耕弘成さん(現衆院議員)と一緒に、勝手補佐官となってサポート役を買って出ています。

 第1次安倍政権が挫折して、失意のどん底だった安倍さんに対して、再びヒノキ舞台に上がるように叱咤激励を繰り返したのも高市さんです。2009年の衆院選で自民党が野党に転落した直後にも総裁選に出馬するように安倍さんに頼んでいます。

 当時は、まだ安倍さんを政権転落の原因とみなす雰囲気が強かったこともあって安倍さんから断られましたが、彼女はその後もあきらめずに、3年かけて説得し、12年の総裁選に挑戦させています。もちろん高市さんだけが安倍さんを説得したわけではありませんが、彼女は歴代最長となる第2次安倍政権の生みの母の一人でもあるんです。

 この総裁選には、安倍さんのほかに、当時の清和会の会長だった町村信孝さんも出馬していますが、彼女はその1年前に「もし安倍さんが出馬した場合に自由に応援できるように」と長年所属していた清和会を退会しています。

 安倍さんが出馬を決断する前に、もしもの時のことを考えて行動できる度胸のよさや決断力が、彼女の強みなのかもしれません。

2013年の参院選投開票で花付けをする安倍晋三首相と高市早苗氏
2013年の参院選投開票で花付けをする安倍晋三首相と高市早苗氏

 これから政権を担っていく高市さんに参考にしてほしいと思っているのは、安倍さんのしたたかで現実主義者の一面です。政権維持のために、岩盤保守層に目配りするだけでなく、アベノミクスを掲げて経済第一の姿勢を示したり、女性活躍や働き方改革を推進するなど国民が関心を寄せるテーマに積極的に取り組んでいました。

 安倍さんは政権を支持してくれる30%の岩盤保守層と、政権に批判的な層30%、その時々で支持不支持が変わる中間層40%の3分類で有権者を捉えていました。そのうちの中間層40%の支持をいかにつかむかが政権安定のために何よりも重要だと語っていましたが、高市さんも保守層以外の他の支持層にも響く政権運営を心がけてほしいです。

 それと安倍さんは、自分と考え方が異なる部分があっても有為な人材だと見れば幅広く活用していました。前任の総裁の谷垣禎一さんや、政治経験豊富な二階俊博さんを幹事長に起用したのがその一例ですが、党内の安定が内閣の政策推進に欠かせないと認識していたわけです。高市さんもその部分を参考にして、長期政権を目指してほしいですね。