別格の“オーラ”だった。フィギュアスケート男子で五輪2連覇を達成したプロスケーター・羽生結弦(30)が座長を務めるアイスショー「羽生結弦 notte stellata」(宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ)は9日に千秋楽を迎えた。自身も被災した東日本大震災から11日で14年。五輪2大会連続出場でプロスケーターの鈴木明子さん(39)が本紙の取材に応じ、共演者の視点から羽生と狂言師・野村萬斎(58)のコラボレーションが生み出す世界観の舞台裏を明かした。

「祈り」と「希望」を出演者全員で届けた。今回で3回目を迎える当公演には、ほとんどの出演者が2023年の初回時から参加。鈴木さんは「みんながこの公演の意味を共有し、言葉にしなくても見てくださっている方に伝えるんだという気持ちが一つになっていた」と振り返る。

 当公演では、かねて羽生が熱望してきた野村との共演が実現。第1部の最後には野村の代表的な演目である「MANSAIボレロ」を演じた。「羽生さんと萬斎さんはアイデアを出し合い、私たちスケーターも周りで滑る中で、タイミングなどの合わせ方が難しい部分もあったが、萬斎さんは柔軟に対応してくれた。本番では集中力が研ぎ澄まされており、明らかに空気が一変する瞬間があった。それが私たちにも伝わってきて、神聖な時間を感じながら演じていた」と神妙に語った。

 さらに、野村へのリスペクトを感じた場面もあったという。羽生は「MANSAIボレロ」時に大袖の衣装を着用。「あの大きな袖の使い方は難しいと思うが、袖の使い方一つにも萬斎さんの動きを学びながら動いているように見えた。袖のなびき方も計算されているように見えたし、萬斎さんへの敬意があるからこそ、一緒に作品をつくり上げようというこだわりがあった」と目を丸くした。

 第2部の冒頭では羽生が18年平昌五輪などで演じた伝説的プログラムで、野村も安倍晴明役を務めた映画「陰陽師」の楽曲を使用した「SEIMEI」を熱演。「2人の演技に懸ける思いは間近で見ていても伝わってきた。羽生さんは本当に集中をしていたし、リハーサルでもジャンプのタイミングを何度も何度も確認していた」と証言した。

 そんな羽生を襲っていた緊迫感は、周囲の想像を上回るものだった。「初日の公演で、私が出番に向けた準備をしていた時に『SEIMEI』を演じ終えた羽生さんが、バックヤードに戻ってきて『本当に緊張した』と話していた。特別な雰囲気、重圧を背負いながらジャンプを跳ぶことは、相当のエネルギーを要したと思う」と回顧した。

 東日本大震災から月日が流れ、記憶の風化を懸念する声もある。だからこそ、当公演には大きな意義がある。「みんなが希望を持ち、またここからも生きていくんだという思い、希望をスケーターたち、この公演を応援して見てくださる方たちが受け取って、それをまた次の誰かに渡すという輪が広がってくれたら」。一人でも多くの人々に前を向いてもらうべく、スケートを通じて願いを発信し続ける。