静岡県の川勝平太知事が10日に辞職願を提出。この時の気持ちを細川ガラシャの辞世の句で表したかと思えば、会見では西郷隆盛の最期を詠んだ漢詩も披露。「自己陶酔だ」「ガラシャに謝れ」と批判が殺到している。

 この日、川勝氏は県議会議長に辞職願を提出。提出直前に記者団から心境を問われた川勝氏は「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」と細川ガラシャの辞世の句で説明していた。明智光秀の3女だったガラシャの死は当時の政治状況が生んだ悲劇として伝えられている。

 一方、川勝氏は1日の訓示の一部が職業差別的だとして辞職に追い込まれていた。また、本人はリニア事業が延期となったことも理由に挙げている。

 記者会見で川勝氏は辞世の句について「とっさに出てきた。感動的で昔から行動規範として持っているものです」と振り返った。一方で改めて辞職の心境を聞かれると今度は漢詩を披露。西南戦争で死んだ西郷隆盛の心情を西道仙が詠んだもので、「『孤軍奮闘 囲みを破って還る』。還るときが来たなあ」と紹介した。

 続きは「一百の里程 塁壁の間 吾が剣は既に折れ 吾が馬は斃る 秋風 骨を埋む 故郷の山」で、川勝氏は「どこに骨を埋めるか。そういう心境ですね」と説明した。

 なぜガラシャに西郷隆盛なのか。布石があった。静岡県が発行する広報誌で川勝氏は侍や武士道をテーマにした対談を連続して行っていたのだ。

 最新の静岡県の総合情報誌「ふじのくに」第56号では大学教授と武士道精神についてトーク。ガラシャの辞世の句にも触れており、川勝氏は「日本人は男女で武士道文化をつくってきました」と熱弁。第55号でも「日本の象徴の富士山を擁する静岡県として武道・武士道にどのように関わっていけば良いでしょうか」と歴史の専門家に尋ねていた。

 昨今、スポーツ庁はインバウンドを意識した日本の武道の見学や体験などを提供する武道ツーリズムを推奨。川勝氏も関心を寄せていたから同じテーマの対談が続いたのだろう。3日の会見でも後継知事について、「スポーツとか武道に理解ある人がなるとありがたい」と話していたくらい、こだわりの案件だったのだ。

 自己陶酔ではなく政策のアピールだったのかもしれない。