【プロレス蔵出し写真館】〝突貫小僧〟星野勘太郎が2010年(平成22年)11月25日に、肺炎で亡くなってから13年がたった。1995年(平成7年)に引退していた星野は、02年から黒いスーツ上下で決めた「魔界倶楽部」の総裁として復活。決めゼリフ「ビッシビシ行くぞ!」でブレークした。

 プロに徹する星野は、ホテルの朝食バイキングの列にも黒いスーツで並んでいた。その姿は、周りからかなり〝浮いて〟いたようだ。

 現役時代の星野は170センチと小兵で、小気味のよいファイトを信条としていた。そして、なにより気が強かった。 

 必ず挙がるエピソードは、今から37年前の86年(昭和61年)1月14日、新日本プロレスの兵庫・豊岡市民体育館での前田日明とのケンカマッチだろう。

 星野は韓国からの留学生・金秀洪とタッグを組み、UWFの前田&山崎一夫組と対戦。前田がローキックを放つが星野は受けようとしなかった。そして殴り合いを展開。口の中を切った星野はエキサイト。金に腕ひしぎ逆十字固めを決めている前田を上から殴りつけた。勝負が決すると、前田は星野に詰め寄り、両陣営の若手が必死で止めていた。

 収まらない星野は「アキラ! ¥$¢£%℃A(聞き取れず)」と叫び、前田の控室に乱入した。

 獣神サンダー・ライガーも、もめたひとり。89年(平成元年)9月21日の横浜大会。星野は獣神ライガー(当時)の掌底で鼻血を出し試合終了後、乱闘になった。ライガーは後に、東スポ紙上で「(6人)タッグ戦で勝ってレフェリーから勝ち名乗りを受けてたら、背後から星野さんが蹴りを入れてきた。それでリングで殴り合いになり、星野さんを控室まで追っかけて行ってケンカした。いい思い出です」と明かしている。

鼻血を出しエキサイトした星野はライガー(左端)に詰め寄る(1989年9月、横浜)
鼻血を出しエキサイトした星野はライガー(左端)に詰め寄る(1989年9月、横浜)

 さて、興味深い話を語ってくれたのは元NタイムスのK記者。

 熊本で屋外(特設リング)で試合があったときのこと。あの長州力が日向ぼっこをしていたり、その日はまったりとしたムードが漂っていたという。星野はタッグマッチの試合途中、場外に降りてリング下にもぐり込むと、置いてあった竹ぼうきを持ってリングに戻った。

 凶器として使用する目的だったが、レフェリーのミスター高橋に「コラ、お前なに持ってんだ」と注意を受け、星野は即座にリングを掃くしぐさをして「掃除しようと思って」と返した。そして、本部席に座る記者に向かい「そう思うよな?」と相づちを求めてきたという。「それがおかしくて、新日でもこんな笑いのあるプロレスもするんだな、となぜかうれしい気分になりました」と振り返る。

 そして、「そんな楽しい試合をしていた星野さんの〝怖い部分〟を目撃したこともありました」と、遠い目をする。

「あるレスラーと試合でもめました。試合が終わってすぐに、話を聞こうと控室に向かいました。控室の中で待っていようと思ったんです。2人は控室に来るまでにもやり合ってたようで、入って来るなり、『なにが悪いんですか!』と星野さんに抗弁してましたね。すると星野さんは、その選手を床に倒して、頭を両ひざで挟んで固定すると、一方的に殴ってました。上から垂直に鉄拳を何度も…」と振り返る。周りのレスラーはあわてて止めていたという。

「目の前の大ゲンカに、固まっている私の存在に気づいた坂口(征二)さんに、『わかってるな、オイ』と言われたので、私は『すいません』と返して控室から出ました。外から開かないようにドアの前に立っていたブラック・キャットは〝なんで(入れないはずの)記者がいるの?〟って顔をしてましたね。外に出ると、他社の記者に囲まれ『中でなにがあったんだ?』と聞かれました。そりゃそうですよね。中でドタンバタン激しい音がしてたんですから…」と回想する。

「その後、新日の記者会見で事務所に行ったとき、星野さんに『オイ、メシ行くか?』と聞かれ、焼き肉をごちそうになりました。誘われたのは、控室でのことを私が誰にもしゃべらなかったからだと思います。多分、坂口さんから〝あの記者が(控室で)見てた〟とでも聞いていたんじゃないかな」

前田と星野の絡みは緊迫感にあふれた(1986年1月、兵庫・豊岡市)
前田と星野の絡みは緊迫感にあふれた(1986年1月、兵庫・豊岡市)

 星野のケンカっ早さは周知されているが、まだまだ公になっていない〝武勇伝〟がありそうだ。前田は後に、「新日本には底意地の悪い先輩はいなかった」と振り返っているので、ケンカはしても〝あとくされ〟はなかったようだ。

 前出の記者は「焼き肉をごちそうになる前、『ちょっと待ってろ』と言われ、事務所前で待ってると、近くに駐車していたベンツで迎えに来てくれました。星野さんって背が低いじゃないですか? アクセルペダルに足が届かないんですよ。反っくり返るように足を伸ばしてペダルを踏むしぐさがおかしくて…。その姿が今でも忘れられません」。そう故人を偲んだ。

「あるレスラーは誰かって? それは坂口さんとの約束もあるし、星野さんにもごちそうになったので、察してください」と、K記者は口をつぐんだ(敬称略)。【プロレス蔵出し写真館】の記事をもっと見る