【石井和義の光と影#22】2002年ごろにサム・グレコ(※)の紹介で知り合ったのが、当時28歳のボブ・サップ(米国)でした。ラスベガスで初めて会って「このデカさだけでスターになれる」と思いましたね。性格はおとなしいけれど、身長は2メートル近くあって体重180キロあったかな。そんな巨体で「もともとNFLの選手で100メートルを11秒台で走る」っていうから、それだけで「強いやん」ってなりますよね。
「これは化けるな」と思って、K―1のチケットを送って日本に招待したんです。来日してから正道会館で練習をさせました。最初のころは真面目にやっていたんですよ。それで僕も彼ばかり見ているわけにもいかないし、指導はほかの人に任せることになりました。その後の活躍はいまさら話すまでもないでしょう。
素人同然でデビューし、02年8月28日に行われた「Dynamite!」ではアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジル)と総合格闘技ルールで対戦。ノゲイラも素人なのを知っていたから「楽勝や」と思っていたらしいですよ。ところがあんなに苦労して、リングを下りた瞬間「二度とやるのはイヤだ」って言ってました(笑い)。
だからこそ今「あのころに、真面目に練習していたらめちゃくちゃ強くなったんじゃないかな」と思うんです。当時は、周りの人間たちはボブを「ヨイショ」ばかりして、ちゃんと基本を教えなかったんですよ。ボブの体格でどんな戦いをしたら勝てるか。そういう戦略的なところを考えてあげられる人間が周りにいなかったんです。
ボブの人気が出たすぐ後に、僕は脱税で捕まってしまった。それでその後の03年3月30日にボブVSミルコ・クロコップ(クロアチア)っていう対戦が組まれて、ミルコのパンチで右眼窩内側壁骨折と右眼窩壁骨折という重傷を負ってしまった。あれで本人が怖がっちゃったところがあるんじゃないかな。あまりにも実力の違う本格派とやると、ああなりますよ。
例えば、アーネスト・ホースト(オランダ)みたいに細くて前に出てくるタイプはボブだってある程度戦えるし、ノゲイラは打撃系じゃないから良さも引き出せた。だけどミルコみたいに距離を取ってきて、一発一発の打撃に威力があって、ちゃんと急所を分かっている選手とは勝負にならない。だから段階を踏ませてあげたかったって思うんです。そういう思いもあって今、改めてボブに指導しているんですけどね。年齢的に、もうひと踏ん張りで、頑張ってほしいですね。
次回はこのボブも出場したビッグイベント「Dynamite!」を振り返ります。
※ オーストラリア出身のキックボクサー。K―1にもレギュラー参戦













