陸上女子の田中希実(23=ニューバランス)は、覚悟を決めてスタートラインに立っていた。
12日に行われたアジア選手権(タイ・バンコク)女子1500メートルでは、4分6秒75の大会新記録をマークして初優勝。15日に帰国した羽田空港で「しっかりと自分の力を確かめることができた」と手応えを口にした。
今大会は「最低でもメダル」を目標に掲げた。当初は6月の日本選手権のように真ん中から仕掛ける展開をイメージしていたというが、父でコーチの健智氏は「ビルドアップのように上げていったほうがいいのでは」と提案。父の言葉を聞いた田中の心には迷いが生じていた。
「見ていて面白くないレースになっちゃうんじゃないかなという部分は心配だったし、ビルドアップで押していって勝つのが一番しんどいレース内容なので、それで勝てなかったら嫌だった」
目標を達成するだけであれば、安全策を選択するのが無難。しかし、田中はその先を見据えていた。「しんどい選択肢をして、その上で勝てたら、すごく自信になるんじゃないかと。その力があるからこそ、父も提案をしているのかなと思ったので、そういうレースプランを選択して、それで勝つということを提案した」
あえて苦しい道を選び、金メダルを奪取。ただ世界のトップで戦うには、さまざまなレース展開に対応する力が必須となる。「世界基準に近づきつつある」と自己評価した一方で「いかにナマモノのレースの中で再現するかという部分と、勝負勘やラップタイムのところもまだ上回ってはいない。ギリギリ並べてもいないので、そこはもっと詰めていきたい」と気を引き締めた。
今大会は7月上旬に開催された全米選手権の1500メートルを意識して出陣。「もし自分が全米選手権に出ていても、戦えたんじゃないかなという手応えであったり、世界選手権でもトップで戦えるというのを具体的に感じられた」と大きな自信を得た。
約1か月後に控える世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)は「最低限は入賞を目指して取り組んでいく。より上の成績がついてきたら、とても幸運なことだなと思っている。今できることにコツコツと向き合いながら向かっていきたい」。来年のパリ五輪を前に大舞台で存在感を示せるか。












