〝法のプロ〟による見解は――。テニス4大大会「全仏オープン」の混合ダブルスは、加藤未唯(28=ザイマックス)がティム・プッツ(ドイツ)とのペアで初優勝。歴史に名を刻んだ一方で、女子ダブルス3回戦(4日)での失格騒動の余波は広がるばかりだ。今回、取材に応じた骨董通り法律事務所の福井健策弁護士は、国際テニス連盟(ITF)制定の4大大会ルールブックが抱える盲点を指摘。その上で加藤が取るべき対処法について明かした。

 連日話題の中心となっているのは、やはりあのシーンだ。女子ダブルス3回戦で、加藤が試合途中に相手コートへ向けて返球したところ、ボールガールに直撃。審判は一度は警告を与えたが、対戦相手のマリエ・ブズコバ(チェコ)、サラ・ソリベストルモ(スペイン)組の抗議によって失格となった。4大大会ルールブックを読んだ福井弁護士は「そもそもルールブックが、かなりあいまいになっている。例えば、危険球の定義は2種類ある。その判定の仕方も明記がなく、失格やポイント剥奪の基準もはっきりしない」と疑問を投げかけた。

 いったいどういうことか。危険球に関するルールの前半部分には「ボールを暴力的に、危険に、あるいは怒りを込めて、打ったり蹴ったり投げることを禁じる(一部割愛)」と書かれているが、後半部分にも「危険球とはコート外に意図的にボールを打つこと、コート内で危険を顧みずに、あるいは不注意にボールを打つこと(一部割愛)」と別の記載がある。特に後半部分は該当範囲が大きく、これでは判断できないという。

取材に応じた福井健策弁護士
取材に応じた福井健策弁護士

 また、処分決定の手順についても福井弁護士は首をかしげる。「少なくともルールブックでは『レフェリーは合理的に事実調査をして処分を決定する』と書いてあるので、調査は合理的でなければならない。仮にビデオ確認すらせず『相手が泣いている』という理由で失格を決めたのなら、合理的とは言えないのではないか。大会側もどういう事実と判断に基づいて処分を決めたかをはっきり発表していない点が最大の問題」と一刀両断。法律家やスポーツのルールに詳しい専門家にとって、ルールブックや大会側の対応は、違和感を覚えるもののようだ。

 加藤は裁定について提訴し、プロテニス選手協会(PTPA)も処分不当とする緊急声明を発表した。事態は長期化の一途をたどる中、福井弁護士は打開策にも言及。「大会側にビデオ確認と理由の開示を求めるのはもちろん、同様に意図せず球が当たったケースで重い処分の対象になっていたかどうかを調べたらどうか。(ロジャー)フェデラー氏(スイス)が同様のケースで処分されていないという情報もある。映像が残っていると思うので、過去の例を挙げていくのも有効では」との見方を示した。

 世界的に波紋を広げた今回の騒動。加藤のコート外での戦いはまだまだ続きそうだ。