中高年になると歯を失う人も多い。昔は入れ歯かブリッジで対応したものだが、最近はインプラントが人気だ。ただし治療費は高額。インプラントか入れ歯か、と悩む人向けに専門家のアドバイスを――。

インプラントのイメージ
インプラントのイメージ

【インプラントは第1選択】

 インプラントは、あごの骨に金属のインプラントを埋め込んで、その上に人工の歯を取り付ける治療法だ。

「患者さんの全身状態が良ければ、常にインプラントが第1選択と考えております。条件が整わずにインプラントできない場合に入れ歯などの治療を選択します」

 治療はインプラントをまず考えるべきというのがインビザラインによる成人矯正やインプラントなど審美的な歯科治療に定評がある海老沢聡・海老沢歯科医院(東京都杉並区)院長だ。

 入れ歯やブリッジは、失った歯の部分以外に影響を及ぼして他の健康な歯を失う原因にもなる。インプラントは、失った歯の部分のみを治療するので他の健康な歯を残せる。また入れ歯やブリッジはかみ心地が変わってしまうが、インプラントは自分の歯と変わらず違和感がなく、見た目も他の天然歯と変わらない。

 仮に全部歯がないような患者さんだとしても、骨がしっかりしていて全身状態が良ければ、やはりインプラントが第1選択だと言う。

 しかし、全部インプラントとなると高額な費用となる。全部歯を失ったような場合は、たいてい重度の歯周病で骨の状態が良くないことが多い。

「骨の状態が良くないとインプラントできる本数が限定的になって、インプラントを併用した入れ歯にせざるを得ません」(海老沢院長)

 難症例ほど費用もかかるためインプラントを選択しにくくなる。つまり、手入れが悪いとインプラントを選択したくてもできにくい。

 また、インプラントは完成するまで最低でも数か月、難症例では1年以上かかるため時間的制約も加わる。インプラントできるかどうかは、年齢などの全身状態、時間的費用的制約、顎骨の状態などによる。インプラントにするか入れ歯にするかも、これらの基準で選択されることになる。

【失敗を避けるシミュレーション治療】

 インプラントは事故が怖いという人もいる。インプラントが人気になって参入した一部の歯科医は技術レベルが低くて術後にトラブルを起こしたりした。ただし、最近はインプラントではシミュレーション治療が採用されて事故は減少している。
 この治療法は、通常の歯科治療で行うレントゲンだけではなく、CT画像を元にシミュレーションし、治療前の診断で三次元の情報を把握できる。立体的に骨の厚みや骨の密度、神経の位置なども手術前に把握するので失敗はほとんどない。

「事故の裁判例などを見ても、CTシミュレーションなしで事故を起こした場合は注意義務違反が指摘される可能性が現在でも高いようです。今後は徐々にシミュレーション治療が普通の方法として必須とされる方向性だと思います」

 手術事故や術後のトラブルを避けたければシミュレーション治療がお勧めだそうだ。次回はインプラントにする場合の注意点を尋ねる。