ガムの歴史に残る商品が消える――。明治は今月末でガム事業から撤退することを発表。1997年、虫歯予防に効果があるとされるキシリトールを日本で初めて配合したガム「キシリッシュ」を終売し、今後はグミブランドへと事業転換する方針を明らかにした。2016年時点で「ガムからグミへ」の“地殻変動”を見抜いていた流通ウォッチャーの渡辺広明氏は今、何を思うのか。
「率直に言ってびっくりしましたね。2021年にグミ市場の売り上げが約635億円を記録し、初めてガム市場(約593億円)を上回りました。22年にはその差がさらに開きグミとガムの格差が鮮明になりましたが、明治がこんなにも早く撤退するとは…。明治といえばかつては人気を誇ったスナック菓子『カール』の輸送コストが上がったことで17年に全国発売をやめ、工場(愛媛県松山市)のある西日本に販売エリアを縮小したこともあった。不採算部門の撤退決断が早いですね」
渡辺氏はかつてガムが落ち込んだ理由として「若者のガム離れ」を挙げていた。幼少期からグミしか食べたことがない若者がいる一方で、ガムしか食べたことがない中高年がいるという世代間格差が存在していたが、新型コロナウイルスの感染拡大がそのバランスに変化をもたらしたという。
「マスクをつけることが当たり前だったので、食べるたびに吐き出さなければいけないガムがより一層敬遠されることになった。噛んでリフレッシュという根強いニーズに対しても味や食感を拡張したグミがどんどん取り込んでいきました。最近ではハードグミがトレンドで、明治では噛みごたえチャート5+と表記している『コーラアップザハード』や、形状に革新をもたらしたUHA味覚糖の『忍者めし鋼 コーラ味』がその代表例。エナジードリンク系のフレーバーも男性を主要ターゲットにしたものです」
右肩上がりで成長を続けてきたグミ市場だが、実はコロナ禍の行動制限がもっとも顕著だった20年には前年比割れを記録している。
「このタイミングで話題となったのが、最初はグミなのに食べているとマシュマロ食感になるというカンロの『マロッシュ』です。“グミ世代”と呼んでも過言ではないZ世代を中心にSNSマーケティングも功を奏しました。他にも水をコンセプトにした透き通る果実感の透明グミ『水グミ』(UHA味覚糖)もヒットした。私はグミ市場がブレークスルーを果たし、なめる喜びのキャンディと噛む喜びのガムの真ん中をがっちり押さえ込んだと見ています」
グミの楽しさは食感だけでなく色とりどりのパッケージにもある。近年、コンビニのお菓子売り場はプライベートブランド(PB)が多くなったことで均一化されてしまったが、レジ前エンドという“一等地”を手に入れたグミは千紫万紅のごとく華やいでいるのだ。
「グミ売り場だけがナショナルブランド(NB)の新商品を次々に発売しており、コンビニにとって来店を誘引する貴重な商品となっているんです。季節限定商品もあれば、三菱食品が本気を出したことで、世界最大のグミメーカー『ハリボー』も定番商品として並んでおり、見る人をワクワクさせることに成功しています」
冒頭で触れた「キシリッシュ」もグミに転生し、4月4日から群雄割拠のグミ売り場に殴り込みをかける。勝算はどのくらいあるのか?
「グミになるんだったらまた食べてみたいという声が周囲で圧倒的に多いですね。明治は『果汁グミ』など定番は強いが、新商品では他メーカーにやや押されているので、かなり力を入れると思う。10年後にはガムだったことを覚えている人がいなくなるぐらい新定番になるかもしれません」
渡辺氏の慧眼再び…となるか、注目だ。
☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」レギュラーコメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。



















