中高年にも希望はある――。「働かないおじさん」問題がたびたび取りざたされるが、「ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた」(フォレスト出版)を上梓した流通ウォッチャー・渡辺広明氏と経済アナリスト・馬渕磨理子氏の2人は「そんな扱い方をされる人たちじゃない!」と俗論を喝破。中高年にも可能なパラレルな働き方を提案してもらった。

「ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた」(フォレスト出版)
「ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた」(フォレスト出版)

 渡辺広明(以下渡辺)僕と馬渕さんはニュース番組でコメンテーターをさせてもらっているけど、自分がすごい人かと聞かれたら全然そんなことはない。馬渕さんが日々たゆまぬ努力をされてるのは知ってますけど(笑い)。

 馬渕磨理子(以下馬渕)そうですね。私はいまだに自分をコミュ障だと思っていますし、挫折もいっぱい経験してきました。大学院卒業後は就活全滅で、正社員になることもできなかった人間ですし…。

 渡辺 経済アナリストになるきっかけとなった医療法人も最初は正社員じゃなかったんだ?

 馬渕 はい。業務委託から始まって途中で正社員になれたんですけど、そのときは本当にありがたいなって思いました。そこを“卒業”して、トレーダーからアナリストになる転機も先輩が背中を押してくれたことですね。リサーチしてリポートを書くという仕事はコミュ障の私に向いていました(苦笑)。

 渡辺 僕はサラリーマンとしてローソンで22年働いたけど、40代に転機があった。出世できなかったという部分もあるんだけど、2006年ごろはブログがはやっていて、消費者目線で小売業を語るということをやっていたら、日経ビジネスオンラインの編集者から「面白いですね」って声をかけられた。ローソンは副業禁止だったから、ペンネームで書いてお金はもらわなかったけど、もしかしたら会社から出てもやっていけるかもしれないと思えたことが良かった。

 馬渕 私は「働かないおじさん」と呼ぶ風潮は日本経済を支えてきた人たちに対して失礼だと思っているんです。おじさんたち自身は気づいていないかもしれませんが、やっぱり知識と経験を持っている。スタートアップのような企業に行けば「来てくれてありがとう」と言われる存在です。今の会社で活躍できるシーンがなければ、いかに自分を求める組織に行くかが大事ですし、その一歩手前が渡辺さんのようにまずパラレルワークを経験することじゃないでしょうか。

 渡辺 はい。意外と驚かれるんですけど、僕は自分の会社をやりながら、業務提携という形で今なおサラリーマンもしています。凡人だから家計のリスクヘッジという意味もありますよ。でも、ひとりで仕事をするのと組織で仕事をする違いも大きいと思っていて両方やっているんです。

 馬渕 すごくよくわかります。私も経済アナリストの傍ら、2018年ごろからFUNDINNOというスタートアップで正社員として働いています。経済を語る上で組織を知ることは不可欠だと思ったし、たとえば営業と広告の人たちにはこんな利害関係があるから対立が起きてしまうんだと実態を見ることができました。あとは自分で立ち上げた一般社団法人の代表理事も務めていて、それぞれ求められる役割は違いますが、「金融と経済」という自分のコアは見失わないよう意識しています。

渡辺氏と馬渕氏(右)はTokyo fm「馬渕・渡辺の#ビジトピ」のパーソナリティーも務めている
渡辺氏と馬渕氏(右)はTokyo fm「馬渕・渡辺の#ビジトピ」のパーソナリティーも務めている

 渡辺 そのスタートアップには、複数企業から業務委託を受けているスーパー主婦がいるんだっけ?

 馬渕 はい。40代後半で子育てが一段落した主婦の方で広報の仕事を始めてから依頼が入り始めて、複数の企業から業務委託を受けるまでになりました。横展開で働くことで知見を広めているからどんどんスキルも上がっていく。そんな人がひとりだけじゃなく複数いらっしゃいます。

 渡辺 1社からもらう給料が10万円だとしてもすごいよね。ここ10年で副業OKの会社が本当に増えたから、僕はどんどんチャレンジするべきだと思ってます。本業とは関係ないと思っていたことが意外なアイデアにつながってプラスになるんだから。

 馬渕 20代のころ、尊敬する経営者に「人の嫌がることを率先してやれ」と言われたんですね。みんなが面倒くさがるような仕事を「やります!」って手を挙げて、それを真摯にやることが次の仕事を呼び込むというのは本当だと思います。

 渡辺 僕も社会的には役職定年を迎える55歳になってるけど、まだまだやりたいことがあるし、どんどん手を挙げていろんな仕事をしていきたいです。

 馬渕 すごいモチベーション! 日本経済を再生するために立ち上がっているスタートアップ企業も多いので、中高年の方にはキャリアダウンじゃない、活躍できる場所があるんだと知ってほしいですね。

経済アナリストの馬渕磨理子氏
経済アナリストの馬渕磨理子氏

 ☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」レギュラーコメンテーター。

 ☆まぶち・まりこ 同志社大学法学部卒業、京都大学公共政策大学院修士課程を修了。トレーダーとして法人資産運用を担った後、金融メディアのアナリストとして活躍。FUNDINNOで日本初の株式投資型クラウドファンディングアナリストとして政策提言にもかかわる。フジテレビ「Live News α」レギュラーコメンテーター。