4人家族の契約殺人を行ったことでロシアを震撼させた〝黒い不動産屋〟ことアレクサンドル・チューチン元受刑者(66)に、プーチン大統領が恩赦を与えていたという。SNSで情報を発している反体制メディア「ネフタ」、ロシア独立系メディア「ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」などが27日までに報じている。

 不動産業者だったチューチン元受刑者は2005年、金銭でもめ、ビジネス相手だったドミトリー・ゼイナロフさんと妻、15歳の長女と11歳の長男の4人家族を殺し屋を雇って殺害した。約100万円で雇われた殺し屋は、アサルトライフルAK―47で家族を射殺し、斧でとどめを刺した。チューチン元受刑者の契約殺人を知った妻は17年に自殺したとされる。その後、逮捕された。21年1月、契約殺人の罪で懲役23年を言い渡され、収監された。

 22年2月のウクライナ侵攻後、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」グループのボスであるエフゲニー・プリゴジン氏が囚人から傭兵をスカウトし始めた。ロシアの刑務所にいる囚人、特に殺人を犯すなど人を殺すことにためらいがない凶悪犯を重点的にスカウトし、ワグネル傭兵部隊を組織していたのだ。最前線で6か月、戦闘すれば、恩赦を与えるという条件だ。高齢にもかかわらず、チューチン元受刑者は志願し、生き残った。

 これまで囚人兵4万人が亡くなったとする一方、1月6日には6か月を戦い抜いた20人の囚人兵に恩赦が与えられ、野に放たれたことがロシアメディアで報じられた。チューチン元受刑者は「戦争の英雄」とたたえられたという。1月17日、チューチン受刑者はトルコに渡り、逮捕前に再婚していた妻と旅行を楽しんでいるそうだ。

 プリコジン氏は恩赦を与えるシーンをあえて公開し、取材者を受け入れ、「殺人者である彼らは乳飲み子の3、4人分以上の価値がある。彼らが戦争に行ったから、あなたの息子、あなたの父、そしてあなたが戦争に行かずに済んでいる。だから量ってください。殺人者を戦争に行かせて恩赦を与えるか、それともあなたの家族を行かせるか」と話していたという。