牡蠣(かき)がおいしい季節はノロウイルスの症状が出やすい時期でもある。その特徴や感染対策を内科医の岡林美紗子医師に教えてもらおう。
――改めて、ノロウイルスとはどのようなものなのでしょうか
岡林医師(以下岡林)ノロウイルスは冬場に起こる感染性胃腸炎の代表的なウイルスです。潜伏期間が1日から2日で、感染すると腹痛や下痢、吐き気、嘔吐を引き起こします。症状自体は基本的には1日から2日で落ち着きます。冬場に多発するウイルスで、11月から春にかけて多く、ピークは12月から2月の寒い時期。人の腸の中でしか増殖しないという特徴があり、丈夫なウイルスでもあるため自然環境下でも長く生き延びることができます。感染力も非常に強いですね。ノロウイルスは少数であっても口から入ってしまえばどんどん増殖してつらい症状を引き起こしてしまうんです。
――子供や高齢者がノロウイルスによって重症化しやすいのはなぜですか
岡林 子供や高齢者は一般的な成人に比べると体力や免疫力が低いんです。また、ノロウイルスに限らず感染性の胃腸炎は嘔吐や下痢をすることで脱水を生じるのが問題ですが、一般的な成人よりも高齢者や子供は脱水を起こしやすいというのも重症化しやすい原因の一つですね。なお、高齢者や子供に限らず糖尿病など免疫機能が低下する持病を持っている人も重症化するリスクがありますので注意が必要です。
――具体的な感染経路を教えてください
岡林 代表的な経路の一つはノロウイルスに汚染された二枚貝ですね。中でも注意なのは牡蠣です。生で食べたり加熱不十分で食べると感染してしまうことがあります。ほかには、感染した患者が嘔吐や下痢した物を処理するときに手についてしまうと、その手を介してウイルスが口の中に入ってしまう場合もあります。牡蠣などウイルスを持った二枚貝を調理した際に使ったまな板や包丁を介して感染することもありますね。
――二枚貝にノロウイルスが蓄積されるのはなぜでしょう
岡林 二枚貝の餌の取り方に関係しています。プランクトンを餌としているのですが、海水を大量に体内に取り込み、その中からプランクトンをろ過し不要になった海水を体外に出す仕組みになっています。その、ろ過していく過程でプランクトンのほかにウイルスも一緒に紛れ込んだりして、それがどんどん貝の中で蓄積されてしまうんです。牡蠣だけでなく、二枚貝全体がこういった餌の食べ方をしています。
――貝がノロウイルスを持っている場合、十分に加熱しても感染してしまうと聞いたことがありますが、実際はどうなのでしょうか
岡林 基本的には牡蠣をはじめ二枚貝は加熱すれば安全だと考えて大丈夫だと思います。例えば牡蠣を調理する際は中心温度が85度から90度くらいになるような火力で1分以上加熱すれば良いでしょう。加熱してもノロウイルスになってしまったという場合は、もしかしたら十分に加熱できていない可能性があります。
――感染対策としてできることはありますか
岡林 ノロウイルスに限らず手洗いは大事ですね。せっけんと流水を使ってしっかり手を洗いましょう。特に感染してしまった方はトイレの後や食事の前、嘔吐した後などは必ず手洗いをしてください。ノロウイルスはアルコールでは完全に破壊できないため、次亜塩素酸を使うと良いです。患者さんの排泄物の直接付着した部位の消毒には家庭の塩素系漂白剤を500ミリリットルの水に対しペットボトルのキャップ2杯の割合で薄めると簡単にノロウイルスの消毒液が作れますよ。患者さんの触れたドアノブなどの消毒程度であればさらにその5倍に薄めたもので大丈夫です。
☆おかばやし・みさこ 千葉大学医学部卒業。千葉西総合病院消化器内科で内視鏡検査や消化器内科の診療に従事する傍ら、狛江市にある松本脳神経外科内科クリニックで一般内科外来にも携わる。総合内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医取得。ヘリコバクター学会所属。













