【取材の裏側 現場ノート】レース前に感じた飛躍の予兆とは――。全国都道府県対抗女子駅伝(15日、たけびしスタジアム京都発着=9区間42・195キロ)の3区(3キロ)で、岡山のドルーリー朱瑛里(しぇり、津山・鶴山中3年)が区間新記録の9分02秒をマーク。衝撃デビューに全国の陸上ファンの視線が一点に集中した。

 大きなストライドに頭がブレない美しいフォーム。身長は157センチと、大柄とは言えないものの、走る姿は誰よりも迫力満点。〝トラックの女王〟で五輪4大会出場の福士加代子さん(40)も「力の伝え方が上から下までしっかりつながっている。本当に理想的な走りでしたね」と大絶賛だった。

 中学世代の全国大会で活躍していたとはいえ、まだ無名に近い存在。しかし、あるチーム関係者は躍進ぶりを確信していた。「昨日(14日)に競技場で練習をしてる時に、実業団や大学生など全世代が集まった。やっぱり動きが1番いいなと思ったのが、ドルーリーだった」。その言葉通りのパフォーマンスを都大路で披露。38位でタスキを受け取ると、17人抜きで順位を21位に押し上げた。目標の8分台には惜しくも届かなかったが「今後の自信になる。大きい舞台での駅伝は始めてだったけど、楽しかったです」と初々しい表情を浮かべた。

 昨年の同時期は貧血に苦しんだが、食生活を改善して復調。練習メニューも自ら考え、得意のラストスパートに磨きをかけてきた。田中希実(豊田自動織機)、広中璃梨佳(日本郵政グループ)ら多くの選手が世界で活躍する昨今の女子陸上界において新たなヒロインの誕生に、同関係者は「日本を代表するような、世界で活躍するような選手になってくれたら」と期待を寄せた。

 ドルーリーの才能は誰もが舌を巻くほど。ただ、まだ15歳の中学生ということは忘れてはならない。周囲がざわつている中でも本人は至って冷静だ。「高校に行ってもインターハイに出場して、少しでも活躍することが目標です」。長距離種目は1つのケガが選手生命を脅かす危険性を秘めている。だからこそ焦ってはいけない。10年後、この浮つかない受け答えがドルーリーの強さの要因だったと――。そう記事で紹介できる日まで楽しみに待ちたい。

(五輪担当・中西崇太)