正念場だ。大相撲初場所11日目(18日、東京・両国国技館)、大関貴景勝(26=常盤山)が新小結琴ノ若(25=佐渡ヶ嶽)に押し倒されて2敗目(9勝)。今場所は好成績での優勝なら綱取りの可能性があった中、痛恨の黒星で厳しい状況に立たされた。この日の勝敗を分けたものとは、何だったのか。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(38=本紙評論家)は、琴ノ若の〝初心回帰〟を要因に挙げた。

 一人大関がまさかの黒星を喫した。貴景勝は立ち遅れた格好となり、琴ノ若の出足に後退。攻めあぐねて引いたところを一気に押し倒された。取組後は取材対応せず、沈黙を貫いた。横綱審議委員会は今場所で好成績の優勝なら綱取りもあり得るとの認識を示していた中で、痛恨の2敗目。まだ優勝争いのトップとはいえ、新横綱誕生の機運は大きく低下した。

 琴ノ若とは過去に5勝1敗で最近は3連勝中。しかも、相手は4勝6敗と黒星が先行していた。なぜ、大関は足をすくわれたのか。日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は「貴景勝は自分で動けなくなった。気持ちが受け身になってはいけない」と指摘した。この日から終盤に突入。綱取りが現実味を帯びてきた状況が、大関を〝金縛り〟にさせた可能性も否めない。

 一方で、琴ノ若は積極的な攻めが光った。秀ノ山親方は弟弟子の相撲内容について「今日は琴ノ若の強みが出ていた。前さばきのうまさに加えて、特有の体の柔らかさがある。相手の突き押しの威力を吸収して、どんどん距離を詰めて自分の間合いに持っていくことができる」と分析。その上で、次のようなエピソードを明かした。

「琴ノ若は負けて部屋に帰ってきた昨夜、まわしを締めて稽古場で体を動かして自分の相撲を見つめ直していた。『肩に力が入りすぎていた』と言っていましたね。無意識に新三役の重圧を感じていたのでは。今朝は『小細工をしてごまかして勝っても自信はつかない。番付が上の強い相手とやるときは余計なことを考えず、自分の力を試すつもりでチャレンジ精神でいくことが大事』と伝えて送り出した」

 一人大関と新小結の精神状態の違いが、勝敗の分岐点となったのか。いずれにせよ、貴景勝は前日までの強気の攻めが影を潜めていたことは確かだ。とはいえ、この日の2敗目で貴景勝の綱取りが完全についえたわけではない。今場所かどうかは別にして、少なくとも優勝すれば来場所へ望みをつなぐことはできる。

 秀ノ山親方は「今場所を引っ張っているのは、間違いなく貴景勝。15日間あれば、こういう負けもある。気持ちの強い大関だから、次の一番に向けてしっかり切り替えていくはず」。残り4日間で看板力士としての真価が問われることになりそうだ。