オリックスの劇的連覇の陰で欠かせない存在となったのが、水本勝己ヘッドコーチ(54)だ。同級生の中嶋監督を横で支え、8月26日からの6試合はコロナ感染で離脱した中嶋監督に代わって指揮を執った。チームをまとめた名参謀が、苦難と喜びの今季を振り返り、ボスのすごさを語った。
悲願の連覇を達成でき、とてももうれしく思います。支えてくれたスタッフ、ファン、すべての方々に感謝を申し上げます。
混戦になった中、いかに選手が自分の力を出せるかを考えていました。プレッシャーをかけない方がパフォーマンスを出せる確率、勝つ確率が上がると。中嶋監督は先が読める力がすごい。成功したらこうする、失敗したらこうする。先の読み方は異常なくらいですよ。僕はチームが勝つためにどういうピースを当てはめるかを理解し、監督の考えを想像する。去年からそうですが「監督は今こう思っているはず」「こうしたいはず」と考える。野球観は全員違うんです。でもボスが指揮する野球観にどうやって近づけるかが大事でした。
広島で5年間、二軍監督をしていたことが役に立っています。あのころ周りのスタッフに「こうしてほしい」と考えていた。その気持ちがわかるから行動できるという点では、うまくいったんじゃないでしょうか。何も言われなくても目だけ見て先に先に動けたら理想ですけどね。ウエスタン・リーグで中嶋監督や阪神・掛布雅之さんにいろんな育成の考え方、野球観を聞けたこともよかった。
カープに30年間いて山本浩二さん、達川光男さん、野村謙二郎さんといろんな監督を見てきた。もちろん練習量という基本線があるんだけど、今の中嶋監督は故障という部分を考えながらどうパフォーマンスを出すかを見る。チームにとって何が一番正しいという答えはない。でもプロセスは違っても勝つためにどうするか、というシーンは広島も中嶋監督も変わらないし、だから苦労はそんなにないですよ。
でもボスがコロナになり、8月26日から代行を任された時は正直、ヤバいぞと…。監督をずっとそばで見ていて「監督ならこうするだろう」と想像し、コーチと話し合いながらやりました。帰って来た時にいい状態で渡したい。自分の好きな野球ができるなんていっさい思わない。失敗もあったけど、6試合で3勝3敗。12球団の監督ってすごいことをしてるんだと思った。二軍は選手をいかに伸ばすかだけど、一軍は勝利の目的がある。これはすごい、体も壊すだろうと思いました。
毎日、自宅待機している監督と試合前、試合後に何度も連絡をとり、データを見ながら相談し、現場にいなくても真剣に考えてくれていました。振り返るとあの時期が個人的には一番しんどかった。育てるためにやるのと勝つためにやることの違いが分かっただけでもいい勉強になりました。
去年、キャンプを見た時は想像以上に「あれ? このままなら厳しいかも…」と思いましたけど、そこから力がついてきた。ただ、タフになれたかと言えば、まだ目に見えないし、すべて「?」です。僕の中では「慣れ」が一番怖いと思ってる。「勝ち慣れ」はいいことなんだけど、甘え、ひずみになってガターンと落ちる。「こいつらなら頑張ってくれるだろう」は完全に慣れになる。僕らもそうだし、常勝チームになるために工夫、試行錯誤を続けないといけない。そのポテンシャルはみんな持ってますよ。
少しずつ中嶋野球をみんな分かってきてる。CS、日本シリーズを経験し、引き出しを増やせばプラスになる。多くの選手が日本代表選手になってほしいし、まだまだ先がある、ということを感じてほしい。
(オリックス・ヘッドコーチ)
☆みずもと・かつみ 1968年10月1日生まれ。岡山県出身。強打の捕手として倉敷工高から社会人・松下電器を経て89年にドラフト外で広島入り。一軍出場がないまま91年のシーズン終了後に現役引退。以後はブルペン捕手としてチームを陰で支え、07年シーズン途中からブルペンコーチ補佐に就任。三軍統括コーチ、二軍バッテリーコーチを歴任し、16年から二軍監督。17年にウエスタン・リーグ制覇、ファーム日本一に輝いた。20年限りで広島を退団。21年から同職。ニックネームはケーシー高峰似の風貌から「ケーシー」。













