超壮大な野望とは――。サウジアラビアの政府系ファンド「公的投資基金(PIF)」が実質的に運営するゴルフの新ツアー「LIV招待」が超高額賞金で有力選手をかき集めて注目を集めている。PIFはゴルフだけでなく、サッカーやF1など世界的な人気を誇るスポーツに膨大な資金を次々と投入。市場規模の大きいサッカーで今後サプライズ計画も指摘されるなど、世界のスポーツ界の〝支配〟を狙っている。

 LIVは超高額賞金で話題を集めているが、米ボストンでの第4戦はそれを象徴する一戦となった。ダスティン・ジョンソン(米国)がプレーオフを制して優勝賞金400万ドル(約5億8000万円)を獲得。ジョンソンは団体戦の賞金75万ドル(約1億800万円)と合わせ、わずか1試合で計475万ドル(約6億8800万円)という驚がくの賞金を手にすることになった。

 PGAツアーはLIV移籍組に対して出場資格をはく奪するなど対立が深まる中、LIV側はスター選手の引き抜きを次々と画策。タイガー・ウッズ(米国)に8億ドル(約1150億円)、松山英樹(LEXUS)には3~4億ドル(約432~576億円)の契約金を提示したと言われており、その金満ぶりが際立っている。

 だが、LIVを運営するPIFの目的はゴルフ界の席巻だけではない。スポーツビジネスに精通する大手広告代理店関係者はこう指摘する。「サウジアラビアは政府としてスポーツを利用した国のイメージアップを図っている。様ざまなスポーツに影響力を強め、世界のスポーツの〝中心〟になるべく惜しみなく資金を投入していっている」

 PIFを率いるのはサウジアラビアのモハメド・ビンサルマン皇太子で、まさに国策を実行する組織。その資産は現在6200億ドル(約90兆円)と言われている。世界的自動車メーカーのマクラーレンの主要株主となり、今夏にはF1チームのアストン・マーチンに出資。大株主の国営企業アラムコを通してF1のグローバルスポンサーとなり、政府がサウジアラビアGPも開催している。

 サッカー界では世界最高峰イングランド・プレミアリーグのニューカッスルを昨秋に買収。イタリア1部インテルやフランス1部マルセイユの買収も現地では取りざたされている。さらに1月にはスペインスーパー杯をサウジアラビアで開催。出場したレアル・マドリードとは蜜月関係でPIFが100%出資の「キディヤプロジェクト」と巨額スポンサー契約を検討中と英紙「タイムズ」に報じられている。

 そうした背景もあり「欧州スーパーリーグ(ESL)構想を支援する可能性もあるのでは」と同関係者。一度はとん挫したものの、Rマドリードは現在もビッグクラブだけを集めた新リーグの計画復活を画策しており、無尽蔵の資金力を持つPIFが援軍となれば鬼に金棒。PIFとしてもサッカー界を二分する新勢力の〝パトロン〟となって牛耳るシナリオが描ける。まさにゴルフ界のLIVと同じ構図だ。

 今後は他のメジャースポーツにも進出が見込まれるPIF。その野望は果てしない。