9月1日は防災の日。そこで今回は「消防レスキュー隊員が教える だれでもできる防災事典」(KADOKAWA)の著者で、元消防士の立場からあらゆる場面で身を守る方法を伝えているタイチョーこと兼平豪氏をお招きした。防災にまつわる疑問に答えてもらいつつ、知っておいて損はない豆知識も教えてもらおう。

【はじめに】9月は台風のシーズンでもありますので集中豪雨や大型台風などから発生する風水害に気を付けたい時期です。また、そういった自然災害が発生すれば交通事故も増えるので注意が必要でもあります。
 私が考える防災とは、単に地震から命を守るという意味ではありません。地震や台風、火山噴火といった自然災害だけでなく火事や急病、テロによる集団災害など、ありとあらゆる命を奪う危険な要因から身を守るという意味での防災を訴えています。

 そのため、暑い時期は熱中症、今大流行している新型コロナウイルスはもちろん、心筋梗塞や脳梗塞は1年を通して多い病気ですので、それらに対する対策も防災の一つとして認識していただきたいところですね。

【防災の疑問①】日本各地の駅では、大雨による浸水が起こることがありますが、もし自分が駅にいるときに浸水が発生したらどうすればいいですか?

【タイチョーのアンサー】基本的に駅には浸水を防ぐための止水板というものが置いてあります。また、公共施設では屋外から水が入らないようにする対策がとられているんです。

 もし自分が地下鉄を利用しているときに水が流入してきたら、駅員さんの指示に従うことを最優先してください。各駅ごとに駅員の間で、そういった水災害が起きた場合の避難経路や避難出口を決めている場合があります。そのため、自分で勝手に行動して避難するのではなく、駅員の誘導に従うことが身を守るうえで大切ですよ。

【防災の疑問②】地震が起きたらトイレに逃げ込むと安全という噂は本当なのでしょうか?

【タイチョーのアンサー】建物の構造によって耐久性等が異なりますが、いずれにせよ地震が起きたときにトイレに逃げ込むのは100%安全とは言えませんし、オススメしません。

 強い地震が起きたときは建物が崩壊するなどの2次災害が起こりますよね。そこで一番多いのが部屋の中に閉じ込められたことで救助を要請する「閉じ込め事案」なんです。消防隊は、けがはなく意識もしっかりしているけれど建物の中から逃げ出せないという人を救助します。例えば、トイレやお風呂場に逃げてしまうと地震によって建物がゆがみドアが開かなくなる恐れがあるんです。その結果、閉じ込め事案として救助対象になる可能性が高くなります。

 その一方で、地震による火災や家具の下敷き等で命の危機にさらされる人も出てきます。閉じ込め事案が増えることは消防隊や救助隊の人手不足にもつながり、そのせいで命の危機が迫っている人の救助が遅れたりするかもしれないのです。一人でも多くの命が救われるようにするためにも、閉じ込めのリスクがあるトイレやお風呂場には逃げ込まないでください。

【防災の疑問③】人が突然倒れたとき、AEDの場所をすぐに見つけられるようにしておきたいのですが、実際はどこに置いてあるかわかりません。

【タイチョーのアンサー】駅の駅長室や学校、警察署、消防署、郵便局、オフィスビル、商業施設に設置されています。また、コンビニに置いてあることもありますし、介護施設での設置率も高いです。

 介護施設では、入居者の高齢者が心肺停止になることが多いので施設の職員はAEDの設置場所を把握しているんです。もしものとき、近くに介護施設があれば借りたり、設置場所を教えてもらうことができますよ。

【防災の疑問④】AEDは初めての人でも使えるようですが、電流を扱うのは少し怖いです。

【タイチョーのアンサー】そう思われる方が多くいますが、AEDは簡単かつ安心して使えるものだと思っていてください。また、AEDを使うにあたって、女性の服を脱がす行為が犯罪になることもありませんので覚えておいてください。

 実はAEDの操作を間違えることはほとんどないんです。使ったことがない人が使用することを前提として設計されているため、機械が音声で使い方を丁寧に説明してくれます。AEDパッドの貼る位置を教えてくれたり、自動で心電図を読み取ってくれて、電気ショックをおとす必要があるかどうか、機械が判断してくれるので間違えることはありません。

 ただ、小さな子供と大人では流す電流の大きさが違うため、実際にAEDを使用する場合はその点に注意してください。小児用モード切り替えキーがあったり、小児用パッドがあったり、小児用切り替えスイッチがあったりします。メーカーによって少し仕様が異なるんです。

【防災の疑問⑤】火事が起きた際、ハンカチで鼻と口をふさぐことが大事と言われていますが、マスクでも代用できるのでしょうか。

【タイチョーのアンサー】新型コロナの感染対策としてマスクを着用したり持ち歩いている人がほとんどだと思いますが、火事の際はマスクをすることでハンカチの代わりになります。実際、私自身、災害現場でハンカチを持っている人をほとんど見たことがありません。女性はハンカチを持っている人がいたりしますが、皆さん近くにあったタオルや服で鼻と口をふさいでいたりします。

 もしハンカチがない場合はそういったやり方よりもマスクを着ける方がいいと思いますね。消防士自身もマスクをして煙の中の状況確認を行ったりもしますね。

 ☆かねひら・つよし 大阪市消防局で救助隊員、救急予備隊員、消火隊員を経験し人命救助による功績表彰を受賞。退局後は株式会社VITAを設立し代表取締役に就任。建物の安全管理事業および消防試験専門スクール「Toride」を運営。ユーチューブチャンネル「RESCUE HOUSE」では災害現場のリアルな声とともに、災害大国ニッポンならではの「気づき」を日々発信している。