【なんてったってリハビリ! もしもに備える!基礎知識と最新事情】 病気やケガからのリハビリでは、いろいろな人が手助けをしてくれます。臨床心理士もその一人。医療ライター・熊本美加氏が自らの担当者に話を聞いてきました。

「リハビリは大変そう…」というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか? 私も心肺停止で脳への酸素が滞ったダメージで「高次脳機能障害」のリハビリを受けるまでは、その必要性を理解できませんでした。

 高次脳機能障害の症状は、子供っぽくなったり、ずっと怒っていたり、コミュニケーションがうまく取れなくなったりなど、いろいろな症状が出ます。人格が突然変わってしまうケースになると、周りは結構大変…。私は注意力、記憶力が著しくダウンして妄想・暴言を繰り返し、さらに入院のイライラで悪魔化&凶暴化。「まさかずっとこのままなの!?」と家族は震えたようです。急性期病院で意識が回復し、起き上がれるようになった当初は、低酸素脳症の影響が強く出て、認知機能テストでもひっかかりました。

「リハビリは症状が落ち着き次第、早く始めるほどいいです。意識や覚醒の状態にもよりますが、スタートしてから数か月は一番回復が期待できます。病院は安全な場所ですが、入院中は刺激が少ないので、リハビリで刺激を入れていくのが大切。刺激を受けると、脳の自然回復力が後押しされます」とは、私を担当してくれた臨床心理士の山本真裕美さん(東京都リハビリテーション病院)。もしも、私がリハビリをかたくなに拒み続けていたら、回復が遅れるだけでなく、最後の到達点まで低くなっていたでしょう。

 心理療法は、突然の入院でベッドに縛りつけられ、不安と恐怖で周りの全員が敵だと思っていた私の気持ちをほぐすところからスタート。臨床心理士は、自分が味方だと分かるように接し、信頼関係をアッという間に築きました。それからは、感情が爆発しないよう、環境要因を見つけ、どんどん取り除いていったのです。この上級テクニックは、ムツゴロウさんレベル! 振り返ればその行動は、何かにおびえて凶暴化した動物を落ち着かせる「はいはい、よしよしよし~」だったと思います(笑い)。

「骨折ならそれを治すことが目的ですが、高次脳機能障害の場合だけでなく、リハビリのストレスで怒りっぽくなった患者さんには、環境から攻めていくケースが多いです。どう対応していいかわからないご家族は、無意識に火に油を注ぐことをしているかもしれません。まずは感情を高ぶらせる要因を取り除くこと。できないことよりできることを見つけてあげる。焦らず、ゆっくり見守るといった、ちょっとしたコツを身につけるといいです」(山本さん)

 これは高次脳機能障害だけではなく、高齢の両親との付き合いにも使えるノウハウです! ぜひ、お試しください。

 ☆くまもと・みか 医療ライター。昨年、電車内にて心肺停止で倒れ救急搬送。幸運にも蘇生したが、低酸素脳症による高次脳機能障害でリハビリを経験。社会復帰後、あまり知られていない中途障害者のことやリハビリの重要性を発信中。