昭和の「三大ヒール」といえばザ・シーク、アブドーラ・ザ・ブッチャー、タイガー・ジェット・シンの3人で異論はないだろう。
個人的に、故シークさんはどことなく不気味な雰囲気で近づき難かった。ブッチャーはCMのイメージもあり親近感があった。その2人に比べるとシンには恐怖感があった。観客、マスコミを襲ったり、カメラのないところでも記者に手を出すなど、凶暴なイメージだったからだ。
シンの最たるエピソードといえば今から47年前(そんなに前だったのかという印象だが…)の1973年11月5日、新宿伊勢丹百貨店前でのアントニオ猪木襲撃事件があまりにも有名だ。当時の夫人・倍賞美津子、弟の啓介氏と買い物を終え、タクシーを止めた猪木を襲ってガードレールに叩きつけ、さらに止まっているタクシーにぶつけ流血騒動を起こし、警察に通報された。本紙をはじめマスコミのいないところでの事件だった。
深夜に猪木を取材した本紙記者の「リング上の乱闘をそのまま街頭で再現するというのは前代未聞、長い日本のプロレスの歴史の上でも初めてだ」の問いに猪木は「変なレコードホルダーになってしまって申し訳ない」と答えているが、当時としても前代未聞の出来事だった。
主戦場を新日本から全日本プロレスに移したシンは1987年2月6日、羽田空港の到着ロビーでもあわや乱闘の行為を引き起こしていた。
前日、札幌大会で故輪島大士さんと一騎打ちを行ったシンは日本人選手、外国人選手の呉越同舟で帰京した。到着ロビーの荷物受取所で輪島さんを見つけたシンは奇声を上げ飛びかかって行った(写真)。
周りの選手が割って入り乱闘は未遂に終わったが、一般客もいて、騒いだ人もいたようだ。一歩間違えば〝新宿伊勢丹事件〟の二の舞になっていたところだった。
シンは何年経ってもシンだった。
「このころの選手はみんなレスラー然としてたよね」
撮影したカメラマンがしみじみつぶやいた。












