【多事蹴論(34)】“お宝ユニホーム”大争奪戦の意外な結末とは――。2006年ドイツW杯出場を目指していた日本代表は04年6月1日、英マンチェスターでイングランド代表と対戦した。FWウェイン・ルーニーやFWマイケル・オーウェンをはじめMFポール・スコールズ、MFスティーブン・ジェラード、MFフランク・ランパードら世界的スター選手がひしめく中、もちろん、MFデービッド・ベッカムも代表入りした。
イングランド・プレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッド出身。端正な顔立ちで女性ファンから絶大な支持を集めた。02年日韓W杯時には日本で「ベッカムヘア」(頭頂部だけを伸ばした髪形)が大流行し「ベッカム様」との呼称がユーキャンの新語・流行語大賞にノミネートされるなど注目されたように、誰もが知る世界的なスーパースターだ。当時はスペイン1部レアル・マドリードに所属し、代表参戦のために帰国。日本戦にも先発出場した。
そんなベッカムとの対戦を前に日本代表イレブンは“狂喜乱舞”。世界ナンバーワンの人気選手と試合後にユニホーム交換をすべく策をめぐらせていた。選手たちは「絶対に欲しい。試合終了の瞬間にベッカムの近くにいる」「なるべくベッカムの印象に残るプレーをすること」など、オークションに出せば100万円超が確実なお宝ユニホームをゲットするため、大議論を展開していた。
迎えた試合では格下の日本が敵地で大奮闘。序盤こそ伝統国を相手に攻め込まれて先制を許したものの、イタリア1部レジーナのMF中村俊輔が好プレーを連発。後半にもオランダ1部フェイエノールトに所属していた好調のMF小野伸二が同点弾をマークし、1―1のドローで終えた。しかし、イレブン間で大争奪戦となっていたベッカムとのユニホーム交換はタイミングが合わずにかなわなかった。
その試合後のこと。イレブンも着替えを終えて帰路に就き、チームスタッフしかいなくなった日本代表のロッカーに突然ベッカム本人が1人で現れた。当時のスタッフらによると、ベッカムは幼少期からあこがれだったという日本代表を率いるジーコ監督のサインをもらいに来たのだという。
同スタッフは「ジーコさんは“ふーん”て感じでさらさらってサインすると、ベッカムは『お礼に…』と言って試合で着用していたユニホームを置いていったんです。ジーコさんはユニホームを手にすると、まったく興味がなさそうに周囲を見渡したんでスタッフは色めき立ったんですけど、ユニホームをポイッと投げた相手はジーコさんの三男チアゴだったんですよ。もちろん、チアゴは大喜びでしたけどね。僕も欲しかったですよ」と嘆いていた。
日本イレブンが熱望したお宝は誰も手に入れられなかったが、世界的なスターと対戦できるのも日本代表の特権。今後は他国からユニホームをねだられるような選手が出てきてほしいものだ。












