請求棄却もその中身は――。1998年7月に起きた和歌山毒物カレー事件で死刑判決が確定し、再審請求中の林真須美死刑囚(60)が、事件に使用されたヒ素の鑑定書の虚偽や、鑑定の報告会見が名誉棄損に当たるとして、鑑定を行った中井泉、山内博両鑑定人に対し計6500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(田口治美裁判長)は11日、請求を棄却した。

 同事件では、現場に残された紙コップに付着したヒ素と林家の台所で見つかったヒ素、カレー鍋に混入されたヒ素が唯一の物証で、ヒ素を鑑定した東京理科大の中井泉名誉教授は、含まれる不純物の比率が紙コップに付着したものと同一と判断。聖マリアンナ医大の山内博客員教授は林死刑囚の頭髪からヒ素が検出されたと鑑定していた。

 請求は棄却となったが、会見を開いた弁護団の見解は前向きだった。

「結論として、刑事裁判の蒸し返しを認めるほどの〝害意〟がなければ不法行為責任は生じないとしたが、中井鑑定は全体的に不正確だと原告の主張をほぼ認めた判決。記者会見も名誉棄損を認めているが、3年の消滅時効が完成している」

 事件は直接証拠に乏しく、動機もはっきりとはせず。逮捕から判決までのほとんどを状況証拠に頼った。物証が不正確となれば、極刑判断の根幹が揺らぐことになる。林死刑囚は冤罪を主張しているが、弁護団は再審請求への影響について「一つの新証拠になると思う」と話した。

 林死刑囚の長男は取材に「棄却と聞いて、お父さんも『4年をかけて棄却という言葉だけで終わってしまうのか』と落胆していましたが、裁判所の方も考えてくれているのがうかがえた。今後も続けていくことに意味があるのかな」と前を見据えた。

 弁護団は控訴について、林死刑囚と相談した上で慎重に検討するという。