次への糧にする――。競泳の国際大会日本代表選手選考会4日目(5日、東京辰巳国際水泳場)、女子100メートルバタフライ決勝が行われ、池江璃花子(21=ルネサンス)は57秒89で優勝。派遣標準記録(57秒79)に0秒10届かなかったものの、表情は晴れやかだった。

「勝っても負けても泣かないで帰る」。50メートルバタフライ(2日)、100メートル自由形(4日)で派遣標準記録を突破できず、大粒の涙を流した。「昨日はこの種目も棄権しようかなってすごく悩んだ」と心が折れかけた。それでも「戦わずして負けるか、戦って終わるか、どっちかを選ぶかだったら自分のためにもこの種目は泳いで、未来につなげられたら」と退路を断ち、スタート台に立った。

 2日のレース後には「去年から全く何も成長していない」と漏らしていた。ただ、成長したからこそ、どん底から頂点を勝ち取った。「練習でも去年と全然違うタイムで泳いだりとか、昔と変わらないような泳力で泳げるような練習もあった。あまり自分を否定し過ぎないようにしたい」と気持ちの面でひと皮むけた。

 目標としていた個人での世界選手権(6~7月、ブタベスト)代表内定はならなかったが、ゴールは先にある。「この試合で結果を出すことがすべてじゃない。(2024年の)パリ五輪でメダルを取るため、活躍するためにこの試合に臨んだ。この試合を1つの転機に、自分にとっては今まで経験したことのない苦しい経験だったので、それがきっとこれからの自分に生きてくる」。あくまで目指すはパリ五輪。ここで落ち込んでいる暇などないというわけだ。

 19年2月に白血病を発症しながらも、ここまで何度も世間を驚かせてきた。さらなる奇跡へ〝水の申し子〟のパリ物語はまだ始まったばかりだ。