昭和、平成、令和と時代は変わり、結婚や働き方など人の暮らしはひとつの価値観に縛られることがなくなってきている。値踏みといえば、初対面の相手がどんな人間なのか測るうえで大きなモノサシとなってきた「学歴」。卒業校を聞けば、だいたいの年収などまで分かる場合もあるのは確かだ。これから先も学歴は絶対的価値観であるのだろうか? 高学歴大卒者限定の結婚相談所を取材した。
東京大学、早稲田大学、慶応大学の高偏差値3大学の卒業生を入会資格とするサービス「東早慶倶楽部」を2011年から提供してきた結婚相談所「アニバーサリーパートナー青山」(東京都港区)では、男性(主に30代)に限れば約8割の成婚率(入籍)を実現してきた。倶楽部の女性会員(主に20代後半~30代前半)も東早慶出身。高学歴同士が出会う“ハイスペックな結婚相談サービス”になっている(東早慶大以外の会員も費用はかかるが紹介可能)。
代表の真央侑奈氏によると、ひと昔前の男性は「若くてかわいければいい!」という単純な視点で女性を選んでいたため、モデルや女子大出身者に人気が集まったという。
「今は違う。女性にも一生働いてほしいと思っている男性は多い。『専業主婦になりたい』甘えがあるとして、女子大や音大女性は不人気です。高学歴や有資格者の女性は一流企業勤め。ということは育休制度も充実している。子供をつくるには女性も高学歴である方が都合がいいんです」
一方、高学歴女性は「学歴で(相手に)引かれて恋愛対象にならない」こともあって倶楽部に入会する人が多いという。「5大商社でも総合職女性は余ってしまう。他の相談所だと『学歴は隠して』と言われることも。頑張ってきた女性を幸せにする目的もあります」
先日発表された、老後に「2000万円の貯蓄が必要」との金融庁の報告書が物議を醸している。16日にはこの報告書をめぐり、政府への怒りや、年金制度の改善を求める2000人規模のデモが都内で行われるなど、老後の心配は尽きない。
「今は高学歴男性でも1人で家族を養うのは重責。2人なら安心して生活できる」。高学歴×高学歴なら不確かな未来にもたくましく生きていけるだろう。
このように現実的な理由で高学歴は武器になるが、一方で伝統的なブランド崇拝の側面もまだ健在だ。地方出身者は親が高卒の場合もあるが、東京では高学歴者の親はもれなく高学歴。親は子供の相手に高学歴を求める。男女会員とも6分の1は親同伴で相談所にやってくる。
考えは非常に保守的だ。良い学校を出て、良い企業・官公庁に入る。さまざまな働き方が生まれてきた現代でさえ、その幸せの方程式は崩れることはないようだ。これから生まれる子や孫もそう教えられて育っていく。
「(婚活市場で)学歴は絶対」かという今回の取材のテーマについて、真央氏は「経営者男性なら『高収入限定』の相談所を利用する。お金だけが目的なら、グレーな仕事でも稼げる。高学歴会員は安定志向で、経営者が少ない。高学歴だと良い会社に入れるし、転職しても年収は下がらない。男女会員ともに、年収1000万円の日東駒専より、800万円の東早慶を選ぶ方ばかり」と答えた。
会員の傾向を語ってきた真央氏だが、自身は早大出身。結婚相手を選ぶなら、やはり高学歴がいい?「私は自立しているので、なんでもいいです。愛情が一番。趣味が合う人がいいな」。最終的な判断は人それぞれ。しかし、学歴至上主義がなくならないことも確かだ。