盟主再建を託された巨人・原辰徳監督(60)の2019年シーズンが幕を開けた。5年ぶりのV奪回が至上命令となる一方、三たび舞い戻った指揮官は自身の後継者育成という大仕事も同時に担う。そのカギを握るのが主のいないヘッドコーチのポストだろう。原監督自身、長嶋監督の下でヘッドとして帝王学を授けられたが、今回あえて空位としたのはミスター流の指揮官禅譲を意識したものなのか…。とすれば、後任の監督候補は――。就任早々、気になる“後継者問題”について本人にズバリ切り込んだ。

 指揮官交代に伴い、宮本投手総合コーチらフレッシュな顔ぶれが並んだ3度目の原内閣。なかでも特徴的だったのは作戦の立案や戦略上の助言などを行う参謀格のヘッドコーチを置かなかったことだ。

 ――今回、ヘッドコーチを空位としたのはなぜでしょうか

 原監督 ヘッドコーチね…。置かなくても自分はできるという自信もありましたので、置きませんでした。置いた方が楽な部分はあるんですよ。でも、ヨシ(吉村打撃総合コーチ)という人間がいるからね。ヨシとはすごく信頼関係がある。あえて置いていないというのもある。

 7度のリーグ優勝に3度の日本一。監督としての実績、経験があるからこそできた決断だったに違いない。しかし、それだけが“ヘッド不在”の理由だったのか。昨年12月、球団トップの山口オーナーが原監督の殿堂入りを祝うパーティーで注目発言を放った。

「(原監督は)『ミスターは自分を次の監督として育ててくれた』と。『その恩を私はまだ返せていないんです』というふうに言いました。それが原さんが3度目の監督を引き受けた理由でありました」

 ――山口オーナーの言葉から、監督の後継者育成への強い意志を感じました。「ヘッド不在」もそこにつながってくる

 原監督 いいところを突いてるね。本当にそう思う。やっぱり僕らが「つなぐ」ということはとても大事なことだと思っているから。ただ、ヘッドコーチという役割を空けておくという言い方はどうか分からないけども、とても大事な位置づけだと僕は思っています。だから、理想は来年、いい形で誰かヘッドコーチが入ってくれれば、というものはあります。

 早ければ来オフにも入閣する“新ヘッド”が次期監督候補となるのか。とすれば、指揮官の脳裏に浮かんでいる“継承者”は誰なのか。

 ――単刀直入ですが、松井秀喜氏か阿部慎之助捕手か。この2人の名前が真っ先に浮かびます

 原監督 いいとこ突いているねえ。でも、ここは僕が固有名詞を出すことはできない。ただ、本当にいいところを突いていると思います。長期的なというか、そういうこと(監督候補の育成)は自分の役割の中のひとつだと思っていますよ。勝つことっていうのは、もちろん一番であるけれどもね。俺は“物語”を大切にするから。

 過去、現在、そして未来へと続く巨人の「物語」。目の前の勝負はもちろん、広い視野で巨人の未来も見据えられるのもベテラン監督だからこそだろう。その原監督にも当然、下積みの期間はあった。

 ――長嶋監督の下でヘッドとして過ごした3年間はどういった時間だったのでしょう

 原監督 監督を盾にして自分が経験できることがありますね。(すべては)監督の考え方次第というんでしょうか。長嶋さんはそういうことを教えてくれましたね。たとえば「オーダーを作ってみなさい」、あるいは「そのゲームをやってみなさい」。そういうことが監督の盾があって思い切ってできるわけです。しかし(長嶋)監督は(原ヘッドが)ミスをしたとしても「あれは僕じゃないんだ。ヘッド=原君がやっているんだ」ということは絶対に言わなかった。いい勉強になりましたね。

 殿堂入りの晴れ舞台でオーナーからかけられた言葉に、原監督は「僕もオーナーにも言ってないんだけど…。オーナーはたぶん、私の深層的なものも理解されているのかなと思ってドキッとしたんだけどね」と思わず苦笑いを浮かべたが、すでに覚悟はできている。覇権奪回と後継者の育成。託された使命は重い。