これがナオミ流の〝勝利の方程式〟だ。女子テニスの世界ランキング14位・大坂なおみ(24)が全豪オープンのシングルス2回戦(19日、メルボルン)で同54位のマディソン・ブレングル(米国)を6―0、6―4のストレートで下し、3回戦に進出した。これで復帰後は無傷の5連勝(棄権を除く)で、今大会はまだ1セットも取られていない。4大大会で優勝4回の実力通り相手を圧倒しているが、そのプレーには大会連覇を見据えた緻密な計算も隠されている。

 今大会の大坂は練習中から笑顔を見せるなどリラックスする一方で、試合になれば手の付けられない強さを発揮。心身ともに充実していることをうかがわせる。2回戦は試合開始と同時に強力なサーブ、レシーブを駆使して相手を翻弄。「オフにしっかり練習してきた」というリターンが決まり、全くスキのない一方的な試合運びで6ゲーム連取の〝ベーグル〟でセットを奪った。

 第2セットは中盤で3―4とリードを許したが、ラリーでは強打のウイナーにネットプレーも織り交ぜて反撃。結局、終盤3ゲーム連取で一気に試合を決めた。この勝利は単なる白星ではない。連覇を目指す大坂は、明らかに「優勝」から逆算したプレーを見せていたからだ。DAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏は「優勝の仕方を分かっている戦い方です。登山に例えるなら、過去に何度も登頂しているから、自分がいま〝何合目〟にいて、何が必要かを熟知してプレーしています」と説明する。

 その具体的な戦術がネットプレーだ。大坂はサーブやレシーブで圧倒する一方で、果敢に前に出るアグレッシブさを随所に見せた。第2セットで3―4と劣勢に立たされた場面でもネットに出て難局を打破。佐藤氏は、これが頂点を見据えたプレーだと分析する。「相手に考えるヒマを与えず、プレッシャーを与えた。ネットプレーにはさまざまな効果がありますが、その一つが早くゲームを終わらせ、体力温存できる利点です」。

 決勝まで7試合を考えると、トーナメント序盤は〝省エネ〟が必須。それをネットプレーによって実現させたのだ。さらに佐藤氏は「勝ち上がるに従って相手も強くなり、ネットプレーもなかなか通用しづらくなる。だからこそ、1、2回戦で戦法を試し、先を見据えているんです」と付け加えた。

 大坂は試合後、ネットプレーについて「男子の試合を見て(デニス)シャポバロフ選手がネットでポイントを取るイメージで自分もやってみたいと思ったし、それがうまくできた時もあった」と話した。4大大会5度目のVへ向けて、準備にぬかりはないようだ。