青木コーチが明かす渋野日向子“壁ドン”の秘密

2019年08月07日 11時00分

渋野はメジャーでのV争いの重圧の中でも、青木コーチ(右)との会話はいつも通りだった(ロイター)

 女子ゴルフで海外メジャー初出場の渋野日向子(20=RSK山陽放送)が「AIG全英女子オープン」(英ミルトンキーンズ・ウォーバーンGC)を制したことは、日本中に衝撃を与えている。プロテスト合格からわずか1年での大快挙に、称賛の声はやまない。世界最高峰の舞台で何が起きていたのか? 今大会ではキャディーとしても「スマイルシンデレラ」を支えた青木翔コーチ(36)を本紙は緊急直撃。“シブコ”がやってのけた劇的Vの裏側に迫った。

 会場のウォーバーンGCは「全英」と聞いて誰もがイメージする海沿いのリンクスコースではなく、林でセパレートされた林間コースだった。青木コーチは当初から「北海道みたいでシブコ(渋野の愛称)に向いてるなと思っていました」と明かす。目標にしていたのは、来年の出場権が手に入る15位以内だったという。「ショットの精度があったんで、キャディーとしてマネジメントを考えるのも楽で、チャンスはあるだろうという感じでした」と手応えを持って開幕を迎えた。

 試合が始まれば、初日から2位と快進撃。「2日目が終わって“もしかしたら”となりましたけど、終わってみたら“ホントに勝っちゃった”という感じです」。青木コーチにとってもまさかの大金星だった。最終日の序盤こそ緊張があった渋野だが、トレードマークの笑顔は最後まで絶やさなかった。メジャーの優勝争いのなかでもギャラリーとハイタッチを交わし、駄菓子を頬張りながらカメラに向かっておどけた。

「日本にいる時と同じというか、いつも以上に緩かった(笑い)。いつものシブコで戦ったと思います」。初めての海外での試合でも決してよそ行きにはならなかった。最終18番パー4、ウイニングパットとなった6メートルのバーディーパットを打つ直前、ラインを読んでいた渋野はここでも笑顔を見せた。
「ボールに書いたラインの向きが『合ってますか?』と聞かれたんで、とりあえず『ウン』と答えたんです。『ホントに?』と言うから『(渋野の体で)見えねーよ』って(笑い)。最後は『いいから行け』って言いました」

 強めにヒットしたボールは“壁ドン”でカップイン。この直前には「プレーオフはしたくないからわざと3パットします」と渋野が言うと青木コーチが「この野郎」と返す場面もあった。世界が注目する大詰めでも、こんなやりとりができるのがこの師弟コンビの強さなのかもしれない。

 青木コーチが渋野の指導を始めたのはおよそ2年前。出会ったころから「将来いい選手になるだろうな」という予感はあったという。「理由ですか? 素直なところ、思い切りの良さ…。なんなんですかね? シブコが持っている雰囲気だと思います」

 想像を上回る超ハイペースで成長を続ける「スマイルシンデレラ」は、この4日間でさらに進化した。

「アプローチはすごく練習していて、上達もして、だから攻められるというのはあると思うんですけど、とにかく一番の武器である思い切りの良さにさらに磨きがかかりましたね」

 まだプロ生活1年の20歳。1年前は500位台だった世界ランクも14位まで上がり、10位の畑岡奈紗(20=森ビル)に次ぐ日本人2番手まで浮上した。青木コーチの指導のもと、来年の東京五輪での金メダルなど、笑顔と進化の先に無限の可能性が広がっている。

☆あおき・しょう=1983年3月28日生まれ。福岡県出身。2011年にコーチ業をスタート。翌年には「青木翔ゴルフアカデミー」を設立し、ジュニア育成に力を入れる。渋野のほか、16年「日本アマ」優勝の亀代順哉(24)ら、複数のプロを指導している。