フィギュアスケートのNHK杯(大阪・東和薬品ラクタブドーム)のアイスダンスは28日にフリーダンスが行われ、今大会がダンスデビューの高橋大輔(34=関大KFSC)、平昌五輪代表・村元哉中(27=関大KFSC)組は3組中3位に終わった。

 この日のフリーダンスではリフト、スピンはこなしたものの、多回転ターンの「ツイズル」で高橋がバランスを崩すなど練習では出なかったミスが目立った。この演技をプロはどう見るか? アイスダンスで全日本選手権4連覇(2003~06年)の実績を持ち、トリノ五輪代表の渡辺心氏(49)は「フリーはスピンも入ってくるし、リフトの数も増える。自分の経験上、どれだけ大変かを知っているので、ハラハラ、ドキドキして見ていました」と感想を語る。

 それを踏まえた上で「見ている側にハラハラさせるようでは本当はダメ。練習して半年にしては良く揃えていますし、スピンもしっかりこなしていますが、こっちが見入っちゃうくらいの余裕はまだないですね」と指摘した。

 高橋が氷に手を着いたミスも本人が「テクニカルというよりメンタル」と語っており、確かに焦りは見られていた。この原因は「とにかく練習時間の問題。毎年オフにしっかり基礎練習し、その上で実戦練習する繰り返し」といい、裏を返せば伸びシロが十分あるとも言える。

「ダンスって360度、どの角度から、いつ写真を撮られても決まってないといけない。たまたま撮られた写真でもイマイチな形の瞬間があってはダメ。それくらい緻密に動かないといけないんです。リフト、スピンだけじゃなく、つなぎの動きでもきれいじゃなければいけないので、本当にアイスダンスって時間がかかるんです」

 思った以上に奥が深い種目のようだ。

 一方、渡辺氏は良かった点としてリズムダンス、フリーダンスのプログラムを挙げる。

「リズムとフリーでガラッと雰囲気を変えたのは良かったと思います。あと、組み始めのころはテーマがハッキリしている方が分かりやすい。抽象的なものだと分かりづらいので、そういう意味でもいい選択だったと思います」

 今後は12月の全日本選手権(長野)、その先には北京五輪出場という大目標がある。渡辺氏は「可能性はゼロじゃない」としながらも「急ピッチで仕上げつつ、同時に土台をしっかりさせる練習も必要です」と条件を付けた。

 2人の今後がどうなるか。未完成な分だけ、期待は高まる。