〝トラックの女王〟の見解は――。7月の世界選手権(米オレゴン州)の日本代表選考会を兼ねた女子1万メートルの日本選手権(7日、東京・国立競技場)は、東京五輪7位入賞の広中璃梨佳(21=日本郵政グループ)が31分30秒34で2連覇を達成。万全な状態でない中での好走に、五輪4大会出場の福士加代子氏(40)も大絶賛だ。

 難しい調整を強いられても、広中には関係なかった。貧血などの影響で本格的に練習を再開したのは、大会のわずか2週間前。約1か月前は出場も危ぶまれたほどだった。しかし、本番では7600メートル通過時点でトレードマークの帽子を投げ捨て、ギアチェンジ。トップ争いを繰り広げていた萩谷楓(21=エディオン)との差をみるみると広げ、勝利を決定づけた。福士氏は「あんなにスパートできるとは思わなかったですよね。最初はこのままゆっくりいくのかなと思っていたけど、全然そうじゃなくて、やる気がどんどん見えてきた感じで、本当に素晴らしい走りでした」と褒めたたえた。

 萩谷と並走を続けながら、残り1キロ付近で一度先頭を譲った動きにも福士氏は注目した。「駆け引きが上手でしたよね。どういう心境だったかは分からないけど、広中選手が冷静でした。萩谷選手も前に出た瞬間に顔が引きつったように見えたので、そこまで逃げ切れる体力はなかったんでしょうね」と分析。広中は状況を的確に読み、自らのペースに持ち込んだ。

 大一番で勝負強さを発揮したのは、さすがといったところ。「きっと広中選手はレースが好きなんでしょうね。だから、ここぞという時の集中力がすごいのだと思います。世界選手権までケガなくいけば面白いですね」と福士氏も興味津々だ。

 世界選手権を「パリ五輪へのステップ」と位置づける広中。東京五輪に続く快走が期待できそうだ。