新たな対策の効果は? 新型コロナウイルス禍の影響で東京五輪・パラリンピックの開催を危惧する声が相次ぐ中、日本政府は海外から来日する選手や関係者に対して出国前に2回のコロナ検査を求めることになった。医療の専門家は一定の評価を示しながらも、懸念材料も指摘。約3か月後に迫った本番へ向けて水際対策を急ピッチで進めているが、政府の対応は“場当たり的”との印象も否めない。

 コロナの恐ろしさが改めてクロースアップされたのは、レスリングの東京五輪アジア予選とアジア選手権(カザフスタン)だった。大会はバブル方式で実施され、選手は渡航前、現地到着後、大会期間中、現地出国前と入念に検査を繰り返してたが、帰国後に日本と韓国の選手合計16人が感染。本紙が既報したように、コロナを完全に封じ込めるのは難しいとの見方が改めて強まっている。

 こうした背景もあり、政府はコロナ対策を強化。昨年12月時点では海外から来日する選手や関係者に対して出国前72時間以内に1度検査を受けさせる方針を打ち出していたが、出国前96時間以内に複数回の検査をする方式に変更。日本の空港到着時にも検査をし、水際対策の強化に努める。さらに、入国後も選手は原則毎日検査をする予定。選手村や競技会場、練習会場などでの行動範囲も制限するという。

 では、この新たな対策にどこまで効果があるのか。ナビタスクリニックの理事長で感染症に詳しい久住英二医師は本紙の取材に「いつコロナに感染しているか分からないので、1回検査するよりは2回検査する方がいい。とにかく検査は多ければ多いほどいい」とメリットを挙げる一方で「検査を提供できる(十分な)キャパシティーがあるのか」と疑問も投げかけた。

 今回の方針変更によりコロナ検査の回数が増えるものの、出国前の検査対応は各国に“丸投げ”する格好になる。国ごとに設備や人員など検査体制が異なる中で、どこまで効果を発揮するのかは未知数だ。極論すれば“アバウト”な国では、検査回数を増やしても感染者がすり抜けてしまう可能性もある。

 世界各国でワクチン接種が進んでいるとはいえ、いまだにコロナ終息の見通しは立っていない。日本でも東京都、京都府、大阪府、兵庫県に緊急事態宣言が発令されるなど、予断を許さない状況が続いている。五輪開催に向けた世論の“逆風”も激しさを増す。果たして、無事に開幕の日を迎えることはできるのだろうか。