アクリフーズ農薬男 地元では「ヒーロー気取り」で有名人

2014年01月29日 16時00分

阿部容疑者の自宅にあったカスタムバイク

 食品大手「マルハニチロHD」の子会社「アクリフーズ」群馬工場(群馬県大泉町)の冷凍食品農薬混入事件で、群馬県警に偽計業務妨害で逮捕された同工場契約社員の阿部利樹容疑者(49)が27日、前橋地検に送検された。待遇の悪さに不平を言い続けた男は「ヒーロー」になりきっていた。農薬を混入させたとされる行為も、自身が“悪役”と決め付けた会社への正義の行いとでも思ったのか。

 


 27日、阿部容疑者を乗せた車は群馬県警から地検へ向かった。金髪のウイッグをかぶったコスプレ姿ではなく、頭髪の薄い気弱そうな男がそこにいた。これまで容疑を否認してきたが、この日になって初めて「自宅にあったマラチオンを含む溶液を薄めて使用した」との供述を始めたという。


 妻と息子の3人暮らしだが、大泉町にある2階建て木造一軒家に人の気配はない。主不在の家には、一躍有名になった青いカスタムバイクが置かれていた。月の手取り12万円(推定)から、なんとか工面した100万円を投入した愛車だ。


 地元では「コスプレの人」「コスプレのバイクの人」として有名。背中に「正義」の字が入った人気漫画「ワンピース」の「海軍」の衣装を着ていた。ワンピース愛はバイクにも反映されている。車体のリア部には白字で「MARINE」。これは同漫画における「海軍」のこと。海軍は海賊を取り締まる「正義」として描かれている。自らを正義のヒーローに投影していたのか。


 バイクにまたがるときは、音楽を大音量で流す姿が目撃された。選曲にもヒーローとしてのこだわりがある。


「アニメ『ワンピース』(1999年から)が最初に放映されていたときの主題歌『ウィーアー!』をかけて信号待ちをしていた。ずいぶん古い曲だと思った」(自動車用品店関係者)。また「コンビニの駐車場に入ってきたバイクから『忍者ハットリくん』の主題歌が『ござる ござるよ』と大きな音で流れてた。ヤバイ人だと思って、目が合ったけどそらした」(犬の散歩をしていた女性)。そうかと思えば「オッサンの青いバイクが店の前を通るときは初代『仮面ライダー』の主題歌が聞こえた」(パチンコ店店員)。


 どれもこれも有名なヒーローの曲だ。さらに、カブトムシの飼育・販売という趣味もある。「栃木県のみかも山公園のフリーマーケットでカブトムシを売っていた」(近所の女性)。自宅裏口には飼育用とおぼしき腐葉土の入ったケースも確認できた。


 ところが、その入手経路には疑問も。「カブトとクワガタが出ることで有名な近所の小さな林があって、虫捕りしているのを見たことがある」(目撃者)。だが、そこは私有地。所有者は「開放しているわけじゃない。勝手に入ったんだな!」と怒った。


 不法侵入疑惑だけでなく、「ブラジルの珍しいカブトを取り寄せていたという噂もある」(地元関係者)。阿部容疑者は副業として1匹数百円で販売していたという。カブトムシは特撮ヒーローもののモチーフになることが多い。ヒーローへの憧れや執着心は、ただならぬものを感じさせる。


 しかし、近隣の女性住民(70)が怒りをにじませてこう語った。阿部容疑者の妻の運転する車に、買った当日の新車をぶつけられたというのだ。


「全然謝りもしない。そういうときは旦那も謝りに来るのが当然でしょ。それからはご近所だけど交流はないわ」


 ヒーローになりたかった割に、ご近所付き合いさえうまくできなかったようだ。