新人競輪選手紹介の「チャレンジ卒業にチャレンジ!」ではオールドルーキーを紹介しよう。今回登場する佐山寛明(31=奈良・113期)は前回の井寺亮太よりもさらに5つ年上。30歳で競輪選手としてデビューした。野球で学生時代、夏の甲子園、春の神宮大会に出場した経歴の持ち主が輪界の頂点を目指して大奮闘中だ。 

 持ち味は年齢を感じさせない先行力。高い身体能力を生かした走りで先を見据えながら、上位争いを展開している。

「師匠(黒川茂高)からも先行が必要と言われているんです。A級1、2班戦でも先行して逃げ切れる脚をつけたい。最初の2~3年は先行でいいと思っています」

 当初は年齢から特昇を考えることもあったという。だが、頂を目指す過程で近道はない。「結果ばかり求めるとレースが小さくなってしまう」と自分に言い聞かせて、ひたすらレベルアップに取り組んでいる。

「デビューしたころはカマシばっかり。それが悪いこととは思わないけど1、2班戦に上がったら9車で前が遠くなりますからね。カマシはバクチにもなります。今年に入ってからはスタートしてから我慢して後ろから行ったり、中団を取ってすかさず行く組み立ても考えてやっています」

 学生時代は白球を追いかけた。近江高では夏の甲子園、そして龍谷大では春の神宮へ。学生野球の2大聖地でのゲームを経験した。卒業後は車のディーラーに。3年たったころ「毎日同じリズムで物足りなく感じた」ことで転職を考えた。「パッと思いついたのが高校の1つ下の後輩の白上翔(95期)。競輪をいろいろ調べて彼に連絡したら技能では難しい、適性試験でと。2回目の受験挑戦のときに師匠も紹介してもらいました」

 今年5月に滋賀支部から奈良支部へ移籍した。「伊代野(貴照)さん(101期)が移籍を勧めてくれたんです。バンクに入った方がいいと。一緒に練習もしています。師匠と練習するときは今も街道ですが」

 間もなくデビューして1年。「しっかり抑えて長い距離を踏むペースがわかってきました。ちょっとずつレベルアップしているとは思います。でも余裕はないです。結果にも満足していません。中身のある1着にこだわりたいです。将来はS級の上位で戦いたいので」

 目標はしっかり見えている。大舞台の経験は勝負の世界で必ず生きてこよう。さらに高校、大学とキャプテンも任されており、人間的にも申し分ない。実力をつけて、数年後には誰もが認める輪界のリーダーになってほしいものだ。

 ――練習がオフの日は

 佐山 休みの日でもリカバリーの意味で朝1時間は自転車に乗るようにしています。自転車に乗らない日はないですね。経験がない分、少しでも乗らないといけないから。特に趣味というのはないですね。

 ――野球は

 佐山 よく誘われるけど、なかなか時間がなくて。見るほうは家に帰ってきたときにやっていたら見る程度。今はどこを応援しているとかないです。

 ――以前は

 佐山 昔は巨人ファンでした。あ、でも高校野球は必ず見ますね。

☆さやま・ひろあき=1987年7月21日生まれ。滋賀県出身。奈良支部所属。113期生として2018年7月に大宮競輪場でデビュー。身長172センチ、体重85キロ。師匠の黒川茂高も近江高校OB。