サイバーエージェント「ノア買収」プロレス界大再編の幕開けか

2020年01月29日 16時40分

三沢さんが築いたノアは大きな変革の時を迎えている

 プロレス・格闘技界、大再編の幕開けなのか。IT大手のサイバーエージェント(藤田晋社長)が、プロレスリング・ノアを買収したことが分かった。29日に正式発表される。DDTに続くグループ入りにより、業界の盟主・新日本プロレスを傘下にするブシロードグループの対抗勢力誕生となる。水面下ではサイバー社グループのさらなる勢力拡大や、第3勢力の動きもささやかれており、2020年のマット界は早くも風雲急を告げてきた。

 複数の関係者の話を総合すると、今月下旬に「ノア・グローバルエンタテインメント社」の株式100%が譲渡され、サイバーエージェントによるノア買収が成立した。きっかけは前体制の“負の遺産”を引き継ぎ、経営状態の悪化が収まらなかったノアの武田有弘社長(48)が、DDTの高木三四郎社長(50)に相談したこと。高木社長を介してサイバー社と交渉を開始したのが昨年11月下旬で、わずか1か月半でスピード決着し、ノアは完全子会社となった。

 サイバー社は2017年9月にDDTから株式100%を譲渡され、傘下に収めたばかり。ノアはプロレス団体としては2つ目のグループ入りとなる。新体制での社長には早急な団体運営の立て直しが求められるだけに、経営手腕に定評があるDDT高木社長の就任が有力視される。また「ノアの象徴でもあるし、ポジションに就いてほしい。現場を任せるとなると、それ以上の適任者はいない」との声が関係者から上がる看板選手の丸藤正道(40)が副社長に就任し、現社長の武田氏は執行役員として団体に残るもようだ。

 ノアとDDTは将来的な経営統合も視野に入れており、新日本プロレスと女子プロレス「スターダム」、キックボクシングイベント「KNOCK OUT」を持つブシロードグループに続くマット界の第2勢力となる。さらにサイバー社は格闘技イベントや女子プロレスにも関心を示しているとされ、まだまだ目が離せない。今後は両グループがシ烈な勢力争いを繰り広げることは確実だ。

 一方で、気になる第3勢力の動きもある。米WWEの最高執行責任者(COO)でブランド「NXT」を取り仕切るトリプルH(50)は昨夏、「NXTジャパン」立ち上げの可能性を認めた上で「スポーツ文化が成熟し、いいファンがいる日本は外せない」と断言。実際に新団体設立を目指し、これまでに複数の団体関係者と話し合いの場を設けたとされる。このまま世界最大プロレス団体の日本本格進出が具体化すれば、ブシロードとサイバー社の2勢力を脅かす存在になる可能性もある。

 また再編の動きは、プロレス界を飛び出しそうだ。格闘技関係者は「影響を受けて何か動きがあるとすれば、立ち技からになるのでは。スターがつくりやすいというのもあるし。立ち技から再編が起きて、それが総合格闘技界にも及ぶかもしれない」。プロレス・格闘技界を股にかけた業界大再編に発展する可能性も指摘されている。

 ノアの武田社長は本紙の直撃に「詳しくは(29日の)会見でお話しします」と語るにとどめた。電撃的なノアの買収劇により、マット界は新たな時代に突入した。  

【波乱続きだったノア20年史】ノアは故三沢光晴さん(享年46)が2000年8月に旗揚げし、全日本プロレスを退団した26選手とスタッフ18人でスタートした。当初から積極的に他団体とも交流して、01年4月にGHCヘビー級王座を設立。04年7月10日に初の東京ドーム大会を開催するなど、順調に業界盟主への道を歩んでいた。

 しかし06年6月に“絶対王者”小橋建太に腎臓がんが発覚し、翌年12月まで欠場。さらに09年6月13日の広島大会で、三沢さんが試合中に急死するなどアクシデントが続いた。同年3月に日本テレビでの地上波放送が打ち切りになったことも影響して経営状況が一気に悪化した。

 その後も12年には秋山準ら主力5選手が退団し、13年5月に小橋が引退するなど逆風が続くと、長期的な観客動員にも響いた。16年11月にはITシステム開発会社「エストビー」に事業譲渡され、元全日本プロレス社長の内田雅之氏の下で再建を目指した。

 さらに昨年2月には、広告や興行事業を行う「リデットエンターテインメント社」が親会社に。6月に社長に就任した武田氏が陣頭指揮を執りリング内を活性化させた一方で、経営状態は上向かず、新たなオーナー企業を探していた。今後はサイバー社の下で復活を目指す。