新日本プロレスのジュニアの祭典「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア(BOSJ)」が15日の名古屋大会で開幕し、Aブロック公式戦で前年度覇者の高橋ヒロム(32)が田口隆祐(43)を下し、3連覇へ好スタートを切った。昨年大会で史上3人目の2連覇を達成したが、コロナ禍における無歓声の状況には複雑な思いを抱いていたという。2回分の優勝の喜びをファンと共有できなかった〝不発弾〟は、かつての熱狂が完全に戻るまで連覇を重ねていく決意だ。

 戦前に田口が繰り出した「尻を使わない」宣言をブラフと見抜いたヒロムは、ゴング直後のヒップアタックをあっさり回避。互いに裏をかき合う心理戦を、名も無きヒロムロールで制して好発進した。

 BOSJでは圧倒的な強さを見せ、7回目の出場ながら歴代最多タイの3回の優勝を誇る。史上初の3連覇に加え単独最多V記録もかかる今大会を前に「前人未到の快挙を止めてくだい。皆さんどうか、ヒロムちゃんを止めてください!」と土下座までして他選手に奮起を促したが、もちろん頂点を譲るつもりはない。直近2回の優勝はヒロムにとって〝完全〟なものではなかったからだ。

 その理由はコロナ禍における「無歓声」の会場にある。

「レスラーもファンも我慢し続けてることですし、あれだけの拍手をもらってありがたいんですが、歓声があったら…とは常に考えてしまいますよ。歓声がプロレスをつくってるんだなと改めて感じたし、もっとお客さんとエネルギーの交換ができるのにと思いますね」

 ド派手なことを好み、褒められて伸びるというより、無類の〝褒められたがり〟のヒロムにとって、かつての熱狂的空間が失われたこの2年間はもどかしい日々だった。

 連覇を果たしても、ファンが喜びを100%爆発させる機会が失われ、自身もそれを享受することができなかった。だからこそヒロムは「その分の歓声をためておいてくれと。その声を浴びるまで、俺は連覇し続けますよ」と〝歓声貯金〟の積み立てを呼びかけ。「今、スポーツ界で緩和に動いているし、もしかしたら(日本武道館で優勝決定戦が行われる)6月3日までに間に合うかもしれないですし」と目を輝かせた。

 米国をはじめとした海外では歓声が解禁されて久しく、日本でもかつての日常が戻る日が待望されている。爆発の時は近いと信じて、時限爆弾がリーグ戦を勝ち進む。