前田日明が天龍と明かす「全日移籍話」 馬場さんと赤坂のホテルで交渉し…

2020年08月25日 11時00分

左から前田日明、天龍源一郎

【天龍源一郎vsレジェンド対談 龍魂激論・前編】ミスタープロレスこと天龍源一郎(70)がホスト役を務める「龍魂激論」の今回は“格闘王”ことリングスCEOの前田日明氏(61)が登場だ。現役時代は交わることがなかった両雄が、本紙紙上で夢の“対決”。3回にわたってお届けする前編では、新日本プロレスと全日本プロレスを代表した2人がお互いのプロレス観を正面からぶつけ合い、UWF、リングスで一時代を築いた前田氏が幻の全日本移籍秘話を明かした。

 天龍:お久しぶりです。体が大きくなったんじゃない?

 前田氏(以下前田):内緒ですけど、過去最高に近いですね(笑い)。

 天龍:ジャンボ(鶴田)は最盛期に138キロあったなあ。

 前田:えっ、138キロもあってあれだけ動けたんですか。すごいなあ。

 ――最後まで戦う機会がなかった大物同士です

 天龍:ジャイアント馬場さんから直接聞いたんですけど、前田選手は新日本から第1次UWFを経て、全日本に移籍する話もあったんですよね。

 前田:ユニバーサルプロレス(第1次UWF)が経営不振で(1985年9月に)崩壊した時ですね。全選手が集まってどうしようかという話になった。「新日本だけには絶対に戻りたくない」という声が圧倒的だったので、赤坂のホテル(当時のキャピトル東急)まで馬場さんに話をしに行ったんです。馬場さんは葉巻をくわえて「全日本は人員的にもパンパンで無理だから、どうしてもと言うのなら君と高田(延彦)君だけ引き受ける」と。それを藤原(喜明)さんに言ったらガックリして。「じゃあ新日本に話をしますよ」「勝手にせい」ということになったんです。

 天龍:その後に、俺がキャピトルに呼ばれて、馬場さんが「今度、前田と高田が来る」と言うから「いいじゃないですか。全日本はメチャクチャ盛り上がりますよ」と喜んでたら「でも他のやつがなあ、ちょっと…」と言葉を濁した。結局話が消えたことが分かって、その後に(グレート)カブキさんが「馬場さんがキャピトルの食事代を節約してれば、3~4人は移籍できたと思う」と怒ってました(笑い)。

 前田:俺、葉巻に凝っていた時期があって年間300万円使ってたんですけど、馬場さんが吸っていた高級な葉巻代だけでも余裕だったんじゃないですかね(笑い)。

 ――結局、お2人は別の道に進むことになりますが、お互いをどうご覧になっていましたか

 前田:最初のころは、正直言って相撲から来て、えらい苦労してるんだなという印象でした。でも(87年の天龍革命から)輪島(大士)さんが相手になると、いきなり試合が変わってリングシューズのひもの痕が顔面に残るほどボコボコに蹴ってたでしょ。「何だこれは」と。相撲時代、よほど輪島さんに個人的な恨みがあったのかなと(笑い)。「輪島さん死んじゃうよ」って思っていました。

 天龍:ボコボコにしたのに一度もギブアップを取れなかった。何度やってもムクッて起きて向かってきて。

 前田:頑丈でしたよね。これは他の日本人にやれないだろうと思っていたら、他の選手にもやりだした。さすがに外国人にはできないだろうと考えてたら、スタン・ハンセンまでノックアウト(88年3月5日秋田大会の天龍、阿修羅原組対ハンセン、テリー・ゴディ組)させたから「どうなってんだ、これ?」って。天龍革命でUWFが話題にならなくなった。危機感を持ちましたよ。

 ――実は前田さんは輪島さんと因縁がある

 前田:高校時代に劇画「空手バカ一代」に影響されて街中でケンカの特訓をしてたんですけど(大阪場所の時期に)ザンバラ髪クラスの相撲取りにどこまで通用するか試そうとした。相撲取りがよく来る心斎橋のお茶屋さんの前で待ち伏せして「頭つかまえて、ヒジ入れて、ヒザ入れて、2、3発殴って…」と狙ってたら、後ろから異様な殺気と気配を感じて。振り向いたら当時横綱の輪島さんだった。「お疲れさまです!」と頭を下げて逃げました。後から考えたら「あの輪島さんをボコボコにするのか」って思いましたよ。

 天龍:フフフ…全盛期の輪島じゃないですか。

 前田:うらやましかったのは、新日本だとちょっと蹴りでカカトが顔面に入ったりすると「あいつは危ない」と言われて次の日から相手にされなくなるんです。それがハンセンをノックアウトしたり、やりたい放題でしょ。新日本じゃありえない。俺が同じことやったら外国人から総スカン食ってましたよ。

 天龍:馬場さんがハンセンの怒りを鎮めたんですよ。外国人には「テークケア」という言葉は大事にしていたからね。

 前田:こっちは肩をポンと叩いてから蹴りを顔面に入れてるのに、相手がケガをしたら「プロレス道にもとる」と言われてしまう。何なんだこれは、と思いましたね。天龍さんはもっとひどいことをしているのに。
 天龍:ハンセンは長い間、失神したことを絶対に認めなかったんです。でも2年前かな。「実はパスアウトした」と初めて言ってくれた。

 前田:いや、映像見ても完璧に失神してますよ(笑い)。

 天龍:でも、前田選手が全日本に来ていても、強い己の意志を持った人間だから、最終的には道を分けたと思いますね。

☆まえだ・あきら=1959年1月24日生まれ。大阪市出身。78年8月に新日本プロレスでデビュー。84年に第1次UWFに参加後、88年に第2次UWFを旗揚げ。91年にはリングスを立ち上げた。99年2月に「霊長類最強の男」と呼ばれたレスリング五輪3連覇のアレクサンダー・カレリンとの一戦で現役を引退。その後も海外との人脈を生かして数々の強豪を招聘し、2008年3月からアマチュア格闘技大会「THE OUTSIDER」を主宰する。現役時は192センチ、109キロ。