【取材のウラ側 現場ノート】野球への「飢え」が結果に結びついているように思う。NPBの歴史に名を刻む輝かしい実績を残して海を渡ったが、メジャーで思い描いた成績を収めることができなかった広島・秋山翔吾外野手(34)。日本球界復帰を果たした男は、荒波に揉まれたことでたくましくなって帰ってきたのかもしれない。

 MLB通算142試合出場で打率2割2分4厘、0本塁打。日本で2015年にシーズン最多記録となる216安打をマークした稀代の打者にとって、屈辱的な数字だったはずだ。故障やコロナ感染もあり、信頼回復の勢いを削がれた時もあった。実力を発揮できなければ淘汰され、メジャーでは鮮明な〝若手優先起用〟が出場機会を奪う。3年目はその煽りを食らい、メジャーでの名誉挽回はかなわなかった。

 苦汁を舐めたからこそ分かる〝痛み〟がある。秋山は広島入団を決断した後、オフの自主トレで〝師弟関係〟にあったソフトバンク・上林誠知外野手(27)から連絡を受けた。新天地の報告と同時に、右足アキレス腱断裂で長期リハビリに励む弟子に送ったエールが、米国で苦闘を強いられた秋山らしかった。

 広島、西武と「秋山争奪戦」を繰り広げたソフトバンクを念頭に「俺がお前のいる球団を選んでいたら、お前がケガを治して復帰した後にケンカになっただろ」という笑いをふくんだメッセージをLINEに打ち込んだ。

 秋山の真意はこうだった。「彼も結果を残していた中で、ああいうケガをした。アクシデントで仕方ないところもありますが、やっぱりレギュラーで(あっても)僕も去年ケガをしてスタートからいけなかった分だけ、ああやって起用のされ方だったり、他の選手が出てきたりっていうのは感じた。焦ってほしくはないですが、そういう世界にいるんだと。その中で、また、まあ…(ソフトバンクからのオファーもあったので)もしかしたら同じチームでやるっていう可能性もありましたし、自主トレで一緒にやっていた仲間で、気にしている人間なので(ユーモアのあるLINEを返した)。連絡をくれたのがうれしかったですし、また、どのタイミングでやるか分からないですが、お互い頑張らないといけないと思います」。

 広島の入団会見に臨んだのが6月30日。その2日後には二軍戦に出場した。取材に応じてくれた山口・由宇球場での〝ギラついた目〟が印象的だった。7月8日には一軍合流。巷で懸念された〝ブランク〟を感じさせない数字を残している。8月20日時点で3割8厘、4本塁打、21打点。一軍合流から欠場はわずか1試合で「不動の3番」に座って、得点圏打率は4割4分と持ち場を心得た働きを見せている。

 上林はかねて、秋山の近くで野球をやる意義をこう語っていた。「いろんな角度から野球を見ている人です。ずっと野球のことを考えているのが分かるし、気づきを与えてくれる。野球への取り組み方とか、発見や刺激をもらえるんです」。

 きっとカープでも数字以上の存在感と相乗効果を発揮しているはずだ。日本球界復帰すぐに淡々と結果を残す技量と胆力はさすが。気概を数字で示し、真価を証明している。メジャーで辛酸を舐めたからこそ、プロ野球人生の〝第3章〟で見せる34歳の意地に注目したい。(ソフトバンク担当・福田孝洋)