“投げる冒険家”久保康友の現在地 流浪の右腕の終わらない旅

2020年11月23日 10時00分

メキシコでプレーした昨年はピラミッドも訪れた(本人提供)

【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】“投げる冒険家”久保康友投手(40)は新型コロナ禍の2020年をどう過ごしたのか。メキシカンリーグでプレーした昨年は「遠征先で空いた時間を利用し、世界遺産や遺跡を訪ねた」。しかし今年は海外渡航もままならず「本当に(仕事を)何もしなかったですよ」と無職生活を余儀なくされた。

 もちろん、漫然としていたわけはない。家庭を持ってから初めて「家族の日常にべったり立ち会えた。子供の行事も完全制覇です」と自粛生活を自分なりに楽しんだ。その上で「(妻が)子供の目線で納得するまで言い聞かせる姿や、男性の視点では気付かない母親という仕事の大変さを体感した」と、改めて家族の温かみをかみ締めた。

 久保はロッテでプロ野球人生をスタートさせ、阪神、DeNAに在籍して17年までNPBでプレー。18年は米独立リーグ、19年はメキシカンリーグ(MLBの3A扱い)で現役を続行した。そこからは「野球というツールを使って世界を渡り歩きたい。知らない世界を見てみたい」と流浪の身となった。体力と家族を守る財力の続く限り野球を続け、冒険家を継続するつもりだった。

 ただ、今年の新型コロナ禍は計算外だった。野球の練習を1シーズン通してできなかったのは初めて。「正直、体が動くんかなというのはありますね。子供の少年野球でちょっと軟球を投げただけで肩が痛いレベルですから」と危機感を隠さない。だが、そう簡単に諦める久保でもない。

「もちろん甘くはないですから。真剣に練習に取り組んで野球をできる体にすることがまず必要。そこからは、レベルに合わせてどこのリーグで投げるか」と脳内でのシミュレーションはできている。

 その上で「これまで日本、米国、メキシコと野球がメジャーな国でプレーしてきた。でも、サッカーの盛んなヨーロッパはどうなんだろう。国における野球の位置付けとは。イタリアやスペインなど遺跡もたくさんありますしね」と言い、欧州でのプレーも視野に入れている。

 一方で、新型コロナ禍はアジア圏より欧州の方が深刻という事情もあり「野球のレベルの問題よりコロナの問題かな」と不安を隠せない。来年もプレーせず2年のブランクとなれば「無理かとも考えている」と楽観はしていない。

「自分の心の声に正直に動きたいと思います。自分の気持ちが揺れた方向に行きます。何にも縛られず、それがやりたけりゃやる」

 シンプルな言葉に尽きる。野球理論や取り組む姿勢への評価も高く、指導者への誘いもある。だが今、その意思はない。

 高額年俸を稼ぎ、責任を背負ってプレーした仕事の野球からは解放された。今は野球というビジネスツールを最大の武器に、流浪の右腕として終わらない旅を続けるつもりだ。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。