米野球殿堂は25日(日本時間26日)に2022年度の殿堂入り投票結果を発表した。資格最終年の10年目で注目された通算762本塁打のバリー・ボンズ氏(57)は得票率66%、通算354勝で史上最多の7度のサイ・ヤング賞に輝いたロジャー・クレメンス氏(59)は同65・2%、通算216勝のカート・シリング氏(55)は同58・6%で選出条件の75%に届かなかった。球史に輝く成績を残すも薬物疑惑や差別発言などが響いた。レッドソックスで3度の世界一に貢献した通算541本塁打のデービッド・オルティス氏(46)は307票、得票率77・9%で資格1年目で選出された。

「最後の審判」が今年ほど注目されたことはなかっただろう。ボンズ氏とクレメンス氏は薬物使用疑惑がなければ、1年目に満票近い得票を得て、間違いなく選出されていた。シリング氏も差別発言が足かせとなったとはいえ、ポストシーズンで11勝2敗は驚異の勝負強さ。早い段階で殿堂に名を連ねたはずだ。

 近年、2017年のティム・レインズ氏が16・2%、19年のエドガー・マルティネス氏が15%、20年のラリー・ウォーカー氏が22%を前年票に上積みして10年目で滑り込んでいる。それだけに昨年61・8%のボンズ氏、同61・6%のクレメンス氏とも“最後の伸び”が期待された。しかし、ボンズ氏は66%、クレメンス氏は65・2%で届かず無念の結果に終わった。シリング氏は昨年の発表後の「候補者から外してくれ」との発言がマイナスとなり逆に減らした。

 薬物使用に厳しい近年の風潮を考えると当然の結果ではあるが、米メディアによるとボンズ氏は1999年、クレメンス氏は97年から薬物使用を開始したとされる。1990年代から2003年までは薬物の厳格な規制前で、ドーピング検査も十分に行われてはいなかった。そのため、「薬物を使用する前から長年素晴らしい成績を残してきた」「(03年以前は)ステロイドは禁止されておらず、ドーピングもまん延していた」などと“同情”する声もあった。

 ボンズ氏は98年までに打撃タイトルは93年の本塁打と打点の2冠だけだが、MVPを3度獲得、通算411本塁打放っている。クレメンス氏は96年までに最多勝に2度輝き通算192勝をマーク。サイ・ヤング賞、最優秀防御率、最多奪三振をそれぞれ3度獲得していた。

 一方、「どんな事情があろうとも薬物使用が明らかになった選手の殿堂入りは認めるべきではない」という反対論は根強く、法廷にまで持ち込まれた薬物使用疑惑を拭うことができず最終的に75%を集めることはできなかった。

 この結果は両氏だけではなく、将来的にも重い。今後、薬物を使用した選手が選出される可能性は閉ざされることになるだろう。その筆頭は歴代4位の696本塁打を放っているアレックス・ロドリゲス氏(46)だ。禁止薬物の購入で14年に全試合出場停止処分を受けた。資格1年目の今年の得票率は34・3%。しかし、同1年目のボンズ氏36・2%とクレメンス氏37・6%と比較してもわずかではあるが下回っており、今後の伸びを考えると殿堂入りはかなり厳しい。

<米野球殿堂入りの条件>全米野球記者協会(BBWAA)に10年以上所属した記者の投票で75%以上の得票で選出される。最大10人まで投票可能。得票率5%以下、殿堂入り資格を得てから10年を超えた場合は資格を喪失する。