【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】少し前になるが、2021年8月14日のワシントンDCのナショナルズ戦。ブレーブスが遠征で来ていた時の話。ニューヨーク州郊外から来たある家族が「DUVALL You’re the 1 who’s just our TYPE(デュバル、あなたは1、つまり私たちのタイプ)」という手作りの応援カードをレフトフィールドで掲げていた。ブレーブスのアダム・デュバルが守っていた近くだ。
20年の1月、当時7歳だったアキンさん一家の長男、ジョナ君は公園で遊んでいる最中に突然体調を崩した。病院へ駆け込むと「1型糖尿病(英語ではType 1 Diabetes)」と診断された。
ブレーブスファンだった父ジャスティンさんは「糖尿病を抱えても人生なんでもできる」というメッセージを息子に伝えたくて、同じ1型糖尿病を抱えながらも一線で活躍する大リーガー、アダムに会わせたいと6時間以上車を走らせた。
試合中、主にナショナルズファンが座るエリアで、ブレーブスファンのカップルがそのひねりの利いたメッセージに気づき、アダムの注意を引こうと一緒に声を張った。フィールドにいたボールガールがそのサインに気づき、同じようにアダムに気づいてもらおうと尽力してくれた。
数回が過ぎたころ、アキン一家の気持ちが通じた。アダムがレフトフィールドでポケットからインスリンポンプを取り出し、ジョナ君に合図したのだ。アキン一家が大喜びしたのは言うまでもない。
その後、アダムは守備で出てくるたびにジョナ君を指さしたり、敬礼したり。アキン一家だけでなく、周りにいた人々にとっても心温まるやりとりを届けたが、最後にすごいプレゼントをした。
その日、ブレーブスが11―2と圧勝していたものの、9回まで3打数無安打だったアダムが12点目となるソロをスタンドに放ったのだ。とにかく大はしゃぎするジョナ君ら。さらに9回裏、守備に出てきたアダムがアキン一家を見ながらダッグアウトを指さした。「試合後に会おう」のメッセージ。
この様子はニューヨーク州ジェイムズタウンのローカル紙「ポスト・ジャーナル」で、アダムから本塁打を放ったサイン入りバットをもらい満面の笑みのジョナ君らアキン一家の写真とともに紹介されている。アダムはジョナ君に「数値をしっかりチェックするんだよ」と優しく伝えたと言う。
実は、3年前にアダムに糖尿病を抱えながら野球する大変さを聞いたことがある。
「少し気を使うのは時差などがある遠征かな。テクノロジーの進化がすごいんだよ。今はループシステムという血糖値を測って自動でインスリン投入してくれるものがあって、管理がしやすい。自分の知識も増えたしね。野球をやめようと思ったことはないんだ。発覚前は体重の激減や体調不良に悩んでたから、原因が分かった時はむしろうれしかった」
彼が糖尿病の診断をされたのは12年、シングルAで野球をしていた23歳の時。慣れたとはいえ、悪い日や投げ出したい日だって当然ある。しかし、どうせ付き合い続けるならポジティブに、とアダム。「病気について調べ尽くすこそ、知識は力だ。そして健康管理の一部、普通のこととして扱う。人生、誰でもけがするでしょ? それと一緒。糖尿病は管理さえしっかりやれば、できないことなんてない」
☆アダム・デュバル 1988年9月4日、米国ケンタッキー州ルイビル生まれ。33歳。外野手。右投げ右打ち。2010年ドラフトで11巡目に指名されたジャイアンツに入団。14年6月26日のレッズとのデビュー戦でメジャー初安打となる本塁打を放つ。レッズ移籍2年目の16年に左翼のレギュラーに定着し、同年のオールスター戦に初選出される。今年7月にマーリンズからトレードでブレーブス復帰。今季は打率2割2分8厘ながら38本塁打、113打点と活躍し、チームの世界一に貢献。自身初となる打点王のタイトルも獲得した。












