スコットランドの博物館が「故人本人の同意を得ていない」として、古代エジプトのミイラを展示から撤去し、英国で大騒動となっている。そんな中、ロンドンの大英博物館は「ミイラを展示から撤去する予定はない」との方針を明らかにした。英紙デーリー・メールが先日、報じた。
騒動の発端は、グラスゴーにあるケルビングローブ美術館・博物館が、長年展示してきたミイラを撤去したことだった。対象となったのは、約4000年前の古代エジプトの神官ネクトの遺体を納めた彩色棺や、ミイラ化した男性の頭部、右手、足など。展示場所には「敬意を表するため、人間の遺体を撤去しました」との説明板が設置された。
同館を運営する「グラスゴー・ライフ」は、故人本人や、その子孫から展示の同意を得ていないことを理由に挙げた。さらに、同市内のセント・マンゴー博物館でも、今後、棺とミイラ化した遺体を撤去する方針だという。
一方、グラスゴー大学のハンタリアン博物館も、約2700年前のエジプト人女性「シェプ・エン・ホル夫人」のミイラについて、「死後もプライバシーが守られるべきだ」と判断。2025年8月から保存修復用の特殊な布で覆っており、今回、今後も非公開を続ける方針を明らかにした。約200年間続いてきた展示は事実上終了した。
こうした動きに対し、大英博物館は異なる姿勢を示した。同館は、ミイラには教育的、歴史的、科学的に重要な価値があるとして、メール紙の取材に「ミイラを展示から撤去する予定はない」と明言した。
同館の公式方針では、人間の遺体は考古学や疾病、遺伝学などの研究に役立ち、古代の人々の死生観を理解する上でも重要だと位置付けている。遺体は尊厳を持って扱うべきだとしながらも、展示を一律に禁止せず、公共の利益などを考慮して判断する立場だ。
サッチャー、メージャー両政権で首相官邸の政策部門の顧問を務めたクリス・マクガバン氏も、ミイラ撤去の動きを痛烈に批判。「博物館は権力者ではなく、国民のものだ」と主張した。
さらに「このままでは、戦争や殺人、死体が数多く描かれた中世の刺しゅう作品『バイユーのタペストリー』でさえ、検閲の対象になりかねない」と警鐘を鳴らした。












