視聴率が右肩上がりで幕を閉じた蒼井優主演のTBS系ドラマ「Tシャツが乾くまで」には、ついに見ることができなかった場面があった。主要人物の空想上に現れた死後のあずさ(夏帆)と、充(松山ケンイチ)の対話だ。
ともに妻あるいは夫がいる充とあずさのひそかな〝関係〟が、2人の乗ったバスの事故によって波紋を広げていく物語。あずさは事故で死に、途中下車で難を逃れた充は失踪を選び、妻咲子(蒼井)から1年間遠ざかった。妻を失った樹生(中島歩)は残された側の気持ちを咲子と共有し、やがて互いのパートナー同士のつながりに通じるものを感じていく…。
夫婦2組で夫と妻がクロスしてコインランドリーで知り合い、対話を重ねる。主要人物でただひとり生きていないあずさは、死後に空想上の存在として樹生のもとに現れた。4人の1対1関係は6通り。11日最終話では、充と樹生、面識のなかった咲子と空想上のあずさが言葉を交わした。前者はコインランドリーでの会話は初めて。後者は初の組み合わせが実現し、6通りの全てがつながった。
ただ、充とあずさの会話は回想によるもの。充だけには空想上のあずさが現れないままドラマは完結してしまった。この結果、あずさはなぜバスを降りず、死に至ったことについてどう〝思っている〟のかという最大の謎が残された。〝空想あずさ〟は樹生にも咲子に対しても、事故やそれを招いたバス旅に言及していない。
自分に無関心な両親と疎遠だった充は、父の具合が悪いと聞いて長野に様子を見にいくことを決める。心細いという充に対し、あずさは押しかけ同行を買って出る。ところがサービスエリア(SA)で、急に逃げたくなった充は一度バスに戻った後、下車してしまう。
あずさに「乗り遅れたみたいです。寝てて気づきませんでした、って感じて(バス乗務員への説明を)お願いします」と言って「じゃあ」とバスを降りる充。乗車目的がなくなったにもかかわらず、あずさは「じゃあお元気で」と応じた。咲子のことを案じて翻意を促すも、独特な失踪論に押された形(8話)。自分もSAから引き返す選択肢もあったのに、なぜ乗り続けたのかは明かされていない。
充は樹生宅を訪れ、遺影に手を合わせる。当初は自分から同行を頼んだと説明したが、「自分のせいにして恨んでもらおうってことですか!」と樹生に責められる。それでも咲子には「俺のせいだとは思ってる。思い続ける」と明かした。
最終話、コインランドリーを充が出た後、残った樹生の前にあずさが現れた。樹生と会うのを選択した形。充の前に出ないのは、相手が空想してくれないからなのか…。












