TBS系ドラマ「Tシャツが乾くまで」4日放送第9話は、主人公の咲子(蒼井優)が、やり直しをともに誓った充(松山ケンイチ)に突然、別れを告げるラストが驚きを呼んだ。いったい何があったのか――。
咲子の変化は、1年間失踪していた充よりも、その間に対話を重ねた樹生(中島歩)の言葉に反映されている。
プチ家出から帰って来た咲子は、充に4回の離婚歴を明かす。充は自身の失踪遍歴と変わらないと寛容に受け止める。
充の優しさや気遣いに研きがかかり、自分が無意識にそうさせていると罪悪感に悩む咲子に、樹生は「完全に今まで通りとはいかないでしょう。お互いの前科がバレたわけですから」と毒舌を吐く。咲子は頬杖をついたまま。樹生は「らしくなさ」を指摘し「前科なんて言い方しないでくださいって言い返してもらえます?」。それでも無反応な相手に〝異変〟を察知した樹生は真顔に。
このコインランドリーの場面から遡ること約30分。帰京後真っ先に訪問してきた咲子に、樹生は「離婚まっしぐら」とツッコむ。咲子は「離婚とか軽々しく言わないでください」と心外な様子で反論。この時は「らしさ」があった。後に充と向き合った際も、晴れやかな顔で「こっちからそう簡単には…」離婚を切り出さないと言った。
その後に起こったのが充の〝音信不通の遅い帰宅〟事件。他意はなかったが、反省した充は前出の「優しさと気遣い」に研きがかかった。「罪悪感」の咲子も、朝食の内容を変えたり〝行動の自由〟を与えるなど配慮しまくり。だが作り笑顔な上、充も朝、普段のピーナツバターが食卓にないのが気にかかる…。
ここで浮かび上がる言葉が「頑張る」。今作では5話での「迷惑」のように、キーワードめいたセリフが繰り返されてきた。咲子は久々の自宅が散らかっていたので「充はキレイ好きなのに」と不思議がる。キレイ好きを否定した充は「いつもは頑張ってただけ」と言い、咲子は「頑張ってたんだ…」と夫への〝気づき〟を自覚する。
充は営む喫茶店で、店員の直人(高橋文哉)の問いかけに、やり直し生活を「楽しい」と言いつつ「頑張ってる。さっちゃんも」と浮かぬ表情で答える。咲子は元夫の篤彦(井ノ原快彦)との電話で「生活ってそんなに頑張るものだっけ?」と投げかける。直前、充よりも一緒にいて楽だという樹生には、ほぼスッピンだと明かし、「頑張んなさいよ」と冗談で返されていた。
互いに気を遣うあまりの「頑張り」を象徴するのが、充が店から持ち帰る洋菓子フィナンシェ。第1話で、咲子に渡すためにわざと多めに作っていることを認める。9話で咲子は、時々だった持ち帰りが今や「毎日」に増えたのに、うれしさはさほどでも…と樹生に示唆。夫の愛情土産が〝重く〟なっていた。
「幸せにしたい」相手の充を頑張らせてしまっている。強まる疑念と自責が、ついに「破れたフィルター」を機に決壊。この時咲子が手にした洗濯機の乾燥フィルターも当初は存在すら知らず、充が黙々と掃除していた可能性を樹生に教えられていた。その破れは無理な頑張りの象徴で、別れを告げる決定打となった。
咲子が言う「好きな人フィルター」は当初、樹生に否定的にとらえられていた。だが9話で樹生は、「バカみたいに充好き好きって言ってる方がまだマシだった」と残念がる。「好きな人フィルターはまだかかってるんですね」と聞く口調は、むしろそうあってほしいので、確認を求める感じに聞こえる。フィルターの機能基準が「好き」ではなく、別のものに。9話では「楽しい」という言葉も頻出。咲子はフィルターの選別が変わってしまったことに気づいたのかもしれない。
第1話の冒頭、乾燥終了のピー音に咲子は「ハイハ~イ」と軽く反応する。9話、樹生との楽しい語らい中に鳴った際にはすぐに体が動き〝自然体〟を感じさせる。ラストのピーは不具合を告げる警報。音も咲子の胸中を物語っていた。











