9月4日放送のTBS系ドラマ「Tシャツが乾くまで」第9話の予告映像ラストに、主人公の咲子(蒼井優)が、夫の充(松山ケンイチ)に「好きな人フィルターって、分かる?」と尋ねるシーンが流れた。「好きな人フィルター」は第1話で印象的に使われており、今回キーワードとして再登場するのか。

 予告編は切り取り映像のため、咲子の質問場面が自身の〝家出〟後のことなのか、回想なのかは不明。ただ、相手の反応をうかがうような視線が何らかの意図をうかがわせる。

 第1話で「好きな人フィルター」は2回聞かれた。いずれも、充の失踪に同行しバス事故で死んだあずさ(夏帆)の夫・樹生(中島歩)と咲子の会話シーンだった。

 妻と会っていた充がどんな人か知りたいという樹生に、咲子は「好きな人フィルターかかっちゃってるんで」正確に語る自信はないと答える。その後、2人の不倫を疑っていた樹生は、その疑問をぶつけ「好きな人フィルターですっけ?掃除した方がいいですよ」と皮肉った。

 後者の会話では、洗濯物の乾燥機が話題になっていた。排水フィルターの掃除はしっかりやっているという咲子に、樹生は乾燥フィルターもあることを教える。調子が悪くなった咲子宅の乾燥機が〝自然に〟直っていたのは、充が黙って乾燥フィルターを掃除していたからだろうと指摘。咲子が知らないフィルターがあった。それを充は教えてくれなかった。

「フィルター」は、好きな人は何でも良く見えてしまうような咲子のマインドセットを意味する。いわば〝1人エコーチェンバー〟。夫の不倫など想像だにしない咲子に、樹生がチクリと一刺しした形だ。

 実際に不倫はなかったことが浮かび上がるが、充の失踪で咲子はむしろ内省を深めた。自分に何が足りなかったのか思い悩み、充から聞いたあずさとの〝関係〟に打ちのめされる。

 しがらみがなく「嫌われてもいい」から何でも言える相手があずさ。充にとって咲子は「嫌われたくない人」だから、理解されそうもないことは話さない。咲子は「汚したくなくて、一番お気に入りの服、全然着てないみたいなこと?」と問いかけ、「思い切りミートソースを飛ばしながら、おいしいねってパスタを食べる方が家族って感じするけどな。汚れたら洗えばいいじゃん」と不満を漏らす(第7話)。

 この直後、咲子は家を飛び出し、行方をくらます。「フィルター」のおかげで触れられなかった充の内面を知った衝撃からか。家出は失踪の追体験でもあり、逃げた側への理解に通じる。予告編の問いかけ場面が家出後のことなら、それは「掃除」ができたことで、充に「フィルター」について聞いてみたかったのかもしれない。

 予告編で充は「何、それ?」と軽い反応を示した。1話で樹生が「いやぁ、久々に聞きました。女子高生じゃないんだから」と返したのとは好対照をなす。8話の「4容疑者集合」のように、多面的に人間性をあぶり出すのがこのドラマ。番組タイトルとも重なる言葉を、大詰めでキーワードとして改めて持ち出したのか…。