【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】少し前、パイレーツのジェイク・マンガムが「プレイヤーズ・ウィークエンド」(選手が用具で自分らしさを表現できる3日間)用にポケモンデザインのバットを特注したと聞き、実物を見たくてクラブハウスを物色していた。

「ポケモンバット」を愛用するパイレーツの外野手ジェイク・マンガム(ロイター)
「ポケモンバット」を愛用するパイレーツの外野手ジェイク・マンガム(ロイター)

 残念ながらジェイクもバットも見当たらなかったが、隣のロッカーにバットが立てかけてある。グリップには、日本刀の柄巻きを思わせるオレンジ色のひし形模様。「もしや…」と期待して声をかけた。

「実はアニメの『鬼滅の刃』のデザインのはずだったんだけど…」。持ち主は今季デビューしたジェイコブ・ゴンザレス。「間違いなんだよね」とカバーを外してくれた。

 バットの先には、赤い着物をまとった青髪の武士らしき青年。ジェイコブは「青髪のキャラクターは…いないんだよね」。そして「本当は黄色い髪で黄色い着物を着てる我妻善逸をリクエストしたんだ」とも続けた。善逸は『鬼滅の刃』の主要キャラクターで、臆病ながら剣士として高い能力を秘める人気者だ。

 では、この謎のキャラクターはいったい…?

ゴンザレスが披露してくれた謎の〝鬼滅バット〟(パイレーツ提供)
ゴンザレスが披露してくれた謎の〝鬼滅バット〟(パイレーツ提供)

 ジェイコブがアニメを見始めたのはコロナ禍。2020年、野球シーズンは打ち切られ、ドラフトも40巡目から5巡目に短縮。指名されず大学へ進学し、寮は一人部屋だった。「ルームメイトもいない、初めて独りで過ごす日常をどう過ごそうかと思った時に、友人に勧められていた『NARUTO―ナルト―』を見たら、一気にハマったんだ」という。

「普通っぽいけど、やっぱり『ONE PIECE』が好きで」。黄色地に海賊旗を描いたスパイクを見せ「こっちはうまくいったよ」と笑顔。ホワイトソックスでデビュー後、1か月余りで移籍した彼には、ぴったりのデザインだ。

「僕が注文するのが、ちょっとギリギリになっちゃったからかもしれない。プレイヤーズ・ウィークエンドにメジャーに残っていられるかも分からなかったから……」

 私が「ええええ!」と残念がるのを見て、ジェイコブはなだめるように説明してくれたが、火に油。初めてなら、なおさら思い通りのバットで打席に立ってほしい。「来年こそは!」と言っても、謙虚に肩をすくめて笑っただけだった。

 善逸は普段は臆病だが、恐怖で意識を失うと迷いが消え、眠ったまま「雷の呼吸」で本来の力を発揮する。化け物級の才能がひしめく大リーグで、トレードの荒波にもまれながら奮闘する若手の心と重なる。やっぱりバットには、善逸を描いてほしかったな…。

 ☆ジェイコブ・ゴンザレス 2002年5月30日生まれ、米カリフォルニア州出身。内野手。右投げ左打ち。188センチ、93キロ。ミシシッピ大では1年時の21年に全米新人賞を受賞し、22年には同大初の全米大学選手権制覇に貢献。21、22年には米国大学代表にも選出された。23年ドラフト1巡目(全体15位)でホワイトソックス入りし、26年5月にメジャーデビュー。同年7月にトレードでパイレーツへ移籍した。