土壇場で頼れるのは、修羅場を知る男だ。巨人は6日の広島戦(マツダ)に4―0で勝利し、3連勝。先発した小笠原慎之介投手(28)が9回4安打無失点で4勝目を挙げ、日本球界復帰後初の完投勝利を飾った。

 前夜は延長11回、10投手をつぎ込む総力戦。「今日はできれば1イニングでも多く」と橋上代行から期待を託された左腕は初回から飛ばした。5回まで広島打線をわずか1安打に封じ、その後も凡打の山を築き、123球で中日時代の2023年7月7日以来、1157日ぶりの完封勝利をつかんだ。

 小笠原は「リリーフが連投、連投だったので、なんとか長いイニングを投げようと思ってマウンドに立ちました」と振り返った。橋上監督代行も「ブルペンの台所事情をしっかり理解してくれていたように感じますし『自分で目いっぱいいけるまで』という思いは伝わりましたね」と称賛。疲弊した救援陣を休ませた意味も大きい。

 これで首位・阪神とは2・5ゲーム差。甲子園での直接対決3連敗で一時4・5差まで広げられたが、再び首位奪取が現実味を帯びてきた。追撃戦で存在感を増すのが、6月加入の小笠原だ。

 チーム関係者は「シーズン途中に小笠原が入った時は先発投手陣もみんな元気で頭数もそろっていたが、終盤に入って離脱者が続出した。小笠原がいなかったらと思うとゾッとする」と感謝する。魅力は投球だけではない。この日も中前打を放ち、今季は16打数4安打の打率2割5分。「野球勘はもちろん、相手投手の心理を捉えるのが上手で打撃にも生かせる。打線が苦しんでいる時には自ら切り開こうとする気概もある」(前出関係者)と評価も高い。

 巨人の「打てる投手」といえば、同じく海を渡ってパイレーツでもプレーしたレジェンドOB・桑田真澄氏も思い起こされる。NPB通算打率2割1分6厘を残した巧打者でもあり、小笠原にも通じるものがある。

 米国ではナショナルズでメジャーとマイナーを行き来し、思うようにいかない日々にもまれながら生き残る術を身につけた。2・5差まで詰めた終盤のデッドヒートは、その真価を発揮する舞台でもある。荒波をくぐり抜けた左腕の勝負強さが、巨人を奇跡の逆転Vへ導く予感は確かに漂っている。