トランプ大統領は19日、北朝鮮の金正恩総書記と今年後半に会談する意向を示すとともに、北朝鮮が「非常に強力な」核兵器を57発保有していると明かした。その翌日の20日、北朝鮮が日本海に向けて短距離弾道ミサイル10発を発射した。その意図とは――。

 トランプ氏は会談の日程については明らかにしなかったが、大統領がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のため中国を訪れる11月に実現する可能性があるとみられている。

 米朝首脳は第1次トランプ政権時の2018年と19年に計3回、直接顔を合わせた。18年6月にシンガポール、19年2月にベトナム・ハノイで首脳会談を開催。同年6月には板門店で電撃的に対面した。

 トランプ氏は19日、ホワイトハウスで記者団から年内に金氏と会談する見通しかと問われると、「会うつもりだ」と回答。さらに「彼は非常に強力な核兵器を57発保有している」と自ら切り出した。米大統領が北朝鮮の核兵器について具体的な保有数に言及するのは異例だ。

 これに先立ちトランプ氏は、ピート・ヘグセス国防長官に対し、韓国との定例合同軍事演習を「大幅に縮小するよう命じた」と発表していた。米国は北朝鮮の核開発を脅威とみなしており、米韓合同演習は北朝鮮による攻撃の可能性に対処するための重要な訓練と位置付けられてきた。それを縮小するというのは、米朝首脳会談実現への地ならしとの見方が出ている。

 しかし、金氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党総務部長は19日夜、「演習の期間と規模が縮小されたとしても、その挑発的かつ攻撃的な性格が変わるわけではない」と国営メディアを通じて批判。そして翌20日、北朝鮮は短距離弾道ミサイルを10発も発射した。トランプ氏からの〝ラブコール〟を拒絶するサインなのだろうか?

 北朝鮮事情通は「トランプ氏の方から〝会いたい〟と言っている以上、北朝鮮はじらすことのできる立場です。また、18、19年当時と比べ、北朝鮮は核・ミサイル能力を大幅に増強し、ロシアとの軍事関係も強化しています。そして、トランプ氏の〝57発〟発言が示すように、無視できない核戦力を築きました。北朝鮮としては、もはや非核化を一方的に迫られる立場ではないということを示しつつ、日本海に10発を撃ち込むことで軍事力を誇示し、『核・ミサイル能力を前提に対等な立場で交渉せよ』とメッセージを送ったのでしょう」と指摘する。

 実際、トランプ氏は何としても米朝首脳会談を実現したい意向のようだ。

 米国事情通は「半年近く続くイラン戦争の泥沼から抜け出せず、支持率が低迷する中、11月の中間選挙を迎えることになります。金氏との会談を実現し、〝ピースメーカー〟としての姿をアピールすることで、世論の流れを変えたいところでしょう」と話している。