多摩動物公園(東京・日野市)は3日、飼育しているライオン16頭のうち3頭が死んだと発表した。16頭中10頭が体調不良となり、そのうち3頭が相次いで死ぬという極めて異例の事態で、都は猛暑の影響があったとみている。

 同園では例年、夏場に備えて放飼場の日陰を確保するほか、寝室への送風や夜間の換気など暑さ対策を講じてきた。しかし、7月中旬以降の急激な猛暑により、食欲不振や倦怠感、活動性の低下などの症状を示す個体が10頭に上り、7月23日からライオンの展示を中止していた。

 起立不能や意識消失など重症化する個体も現れ、7月28日にムギ(メス、3歳)、同30日にイチゴ(メス、11歳)、8月2日にルエナ(メス、15歳)が死んだ。解剖では3頭とも全身の脱水や多臓器不全が認められた。死因は引き続き調査中だが、都は暑さの影響があったとみている。

 ムギは7月22日から食欲不振が見られ、翌23日には立ち上がれなくなった。猛暑による体調不良を疑い、送風や散水などの対応を続けると、27日には口元へ運んだ餌を少量食べるようになったものの、大きな改善は見られなかった。26日からは皮下補液や強肝剤、ビタミン剤の投与も行われたが、28日に死んだのが確認された。

 短期間に複数のライオンが死ぬケースは極めて珍しい。2022年末から23年初頭にかけては、和歌山県のアドベンチャーワールドで新型コロナウイルスに感染した高齢ライオン2頭が死んだ。また、24年にはベトナムの動物園で高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の感染によりライオン3頭が死んだ例が報告されている。

 飼育下のライオンの寿命は15~20年ほどとされる。今回死んだイチゴとルエナは高齢域に入っていたが、一方で3歳の若いムギも命を落としたことから、加齢だけでは説明できない異例のケースとして、猛暑との関連が注目されている。

 ライオンはアフリカに生息するネコ科最大級の肉食獣で、「アフリカ生まれだから暑さに強い」というイメージを持たれがちだ。

 動物事情に詳しい専門家は「ライオンが適応しているのは高温・乾燥した環境で、日本のような高温・多湿の環境とは全く別物です。ネコ科は全身で汗をかくことができず、肉球など一部でしか発汗できません。そのため汗による体温調節が苦手で、湿度が高いほど熱中症のリスクは高まります」と指摘する。

 アフリカのサバンナでは日中の気温が40度近くまで上がることもあるが、湿度が低く、朝晩は大きく気温が下がる上、風も吹く。一方、日本では気温35度を超え、湿度80%前後になる日も珍しくなく、体内に熱がこもりやすい。そのため、ライオンにとっては日本の夏の方が大きな負担となる可能性がある。

 実際、以前から在日アフリカ人の間ではSNS上で「日本の夏の方が暑い」「湿度がきつい」といった声が上がっている。「アフリカ生まれだから暑さに強い」という常識は、日本特有の高温多湿の前では必ずしも当てはまらないようだ。