日本国内はおろか世界中でも類を見ない唯一無二の美術展「ギフトルドン えをみてえをかく展覧会」が、23日から岐阜県美術館で行われている。名画を見ながら描くという、従来の美術館ではありえない企画を実現させたのは、東京藝術大学学長で岐阜県美術館館長のアーティスト・日比野克彦氏(67)。27日、その日比野館長が企画展の意図について報道陣に語った。

 通常、美術館の展示室では絵の保全のため筆記用具などの持ち込みは推奨されない。大規模展になればまず禁止される。比較的自由な海外でも事前認可が必須で描ける作品も決まっているなど制約がある。ところがこの展覧会では美術館所蔵の国内外の名画の前で自由に絵を描ける。

 日比野館長はこうした〝タブー〟に踏み込んだ理由として「美術館での体験を広げたかった」と話す。

「これまで美術館の体験とは観賞することだった。でも絵には描いた人がいて、その人は何かを見て、考えて、伝えようとした。つまり絵は物ではなく出来事なんです。描くことでそれを自分のこととして体験できる。メッセージとしてこれを打ち出す展覧会は、きっと世界初だと思います」

 お手本となる作品は名画揃い。岐阜美が誇るオディロン・ルドンのほか、ピエール=オーギュスト・ルノワールの「泉」、藤田嗣治や熊谷守一、漫画家水木しげるの作品などが惜しげもなく展示されている。11月8日までの会期中に複数回の入れ替えを行い、パブロ・ピカソやポール・ゴーギャンも予定されている。関係者は「これが描きたいから展示してほしいなどのリクエストも受け付けたい」という。

 反響は大きく、県内小中学校美術系教師を対象にした8月18日の「日比野克彦と図工・美術の先生100人が えをみてえをかくフェス」には、「都合がついた県内の先生ほぼ全員ではないか(笑い)」(関係者)という124人が申し込み、全員を受け入れることとなった。

 持ち込める画材については美術館側に確認が必要だが、持参しなくても現地で色鉛筆や紙を提供してくれる。また日比野館長によるスペシャルワークショップは9月以降も行われる予定だ。