「AⅠには涙を流せない」――。テレビ西日本(TNC)の五十嵐悠香アナウンサー(28)は、「ももち浜ストア」「とべとべホークス」「福岡NEWSファイルCUBE」「ももスポDEEP」などで活躍する人気アナだ。AⅠ時代に考えるアナウンサーの役割、尊敬する有働由美子への思い、ホークス取材の裏側、そして意外な素顔までを聞いた。

背番号「8CH」をアピールする五十嵐アナ
背番号「8CH」をアピールする五十嵐アナ

 ――子供の頃はどんな性格だった

 五十嵐 今では想像できないと思いますが、すごくおとなしくて目立たない子でした。自分から強く主張するタイプではありませんでした。中学から東京女学館の国際クラスに入り、6年間同じ仲間と過ごし、明るい友人に囲まれたことで自然と自分も変わっていったと思います。

 ――留学中に料理の腕も上がった

 五十嵐 聖心女子大3年の時に1年間、カリフォルニアへ留学しました。最初のホームステイ先では、70~80代くらいのホストマザーと2人で暮らしました。日本食が好きな方だったので、うどんや豚汁などを作ると喜んでくれました。料理をする機会が増え、私のために炊飯器まで買ってくれたんです。留学中に料理の基礎が身につきました。

 ――その後の寮生活で考え方も変わった

 五十嵐 寮ではメキシコ出身のルームメート、カーラと2人部屋でした。映画を大音量で見ることがあり、思い切って「イヤホンをしてほしい」と伝えると「言ってくれてありがとう」と返されました。意見を伝えることは悪いことではないと気づき、授業でも積極的に発言できるようになりました。

 ――アナウンサーを志したきっかけは

 五十嵐 高校の体育祭です。3年生が踊る伝統のフォークダンス「カドリール」に合わせてナレーションをする役のオーディションを受けました。落選しましたが、私の声を聞いた友人が涙を流し「心が揺さぶられた」と言ってくれたことが大きかったです。声で人の心を動かせることに価値を感じました。

 ――就職活動は順調だった

 五十嵐 まったくうまくいきませんでした。東京、名古屋、大阪など20社ほど受けても決まらず、他業種も受けましたが「違う」と感じ、アナウンサー一本に絞りました。福岡で最初に受けたTNCから内定をいただきました。母が福岡出身だったので、福岡で働けることもうれしかったです。

 ――内定の連絡を受けた時は

 五十嵐 最終面接後、博多駅で叔母とお茶をしていました。帰り道で電話がかかってきて、頭が真っ白になりました。「ありがとうございます」と言うのが精いっぱい。叔母に伝えるとハグして喜んでくれました。母も安心した様子でした。

 ――入社試験ではモノマネも披露した

 五十嵐「芦田愛菜さんのモノマネをするやしろ優さん」です(笑い)。最終面接で披露すると笑いが起きました。人事の方に「モノマネで受かったんですか」と聞いたら「それもあるかもね」と言われました(笑い)。

 ――体を張った仕事も経験した

 五十嵐 入社して間もない頃、大分・城島高原パークでバンジージャンプみたいなものに挑戦しました。雨の中で芸人さんと一緒だったので「アナウンサーも同じことをするんだ」と思いました(笑い)。つり上げられた後、自分でひもを離して落下するので怖かったです。びしょぬれになりましたが、今振り返ると楽しい思い出です。

 ――成長を実感した出来事は

 五十嵐 フジテレビ系列の第42回FNSアナウンス大賞を受賞したことです。「みんなのサザエさん展」で一人4役をアテレコした中継が評価されました。モノマネだけでなく、紹介の流れや間、表情なども含めて評価されたと聞きました。5年間続けてきた中継の積み重ねが形になったようで、努力が報われた感覚がありました。

第42回FNSアナウンス大賞を授賞した五十嵐アナ(提供写真)
第42回FNSアナウンス大賞を授賞した五十嵐アナ(提供写真)

 ――仕事で大切にしていることは

 五十嵐 一度も手を抜いたことはありません。毎週の中継でも必ず全力でやってきました。どんな仕事でも引き受けたら最後までやる。経験は絶対に無駄にならないと思っています。

 ――視聴者の言葉で心に残っているものは

 五十嵐 闘病中の女性が「生きる活力になっています」と言ってくださったと先輩から聞きました。自分が誰かの役に立てていると感じられることが一番うれしいですし、仕事を続ける力になります。

 ――ホークス取材で印象に残っている選手は

 五十嵐 現在は巨人のリチャード選手です。入団間もない頃から番組で密着し、焼き肉企画やオリジナルグッズ制作にも関わりました。一軍で結果が出ず筑後へ戻る時期もあり、努力しても必ず報われるとは限らない厳しさを感じました。移籍後も応援しています。

 ――AI時代に人間のアナウンサーだからこそ伝えられるものは

 五十嵐 感情です。AIは滑らかに読めても、涙を流すことはできません。体育祭のナレーションで友人が涙を流してくれたように、人の心を動かすのは人間の思いだと思います。台本を読むだけでなく、自分の感情を乗せて伝えることを大事にしています。

 ――尊敬する有働由美子アナの魅力は

 五十嵐 泣く時は泣き、怒る時は怒る。もちろん感情をむき出しにするわけではありませんが、視聴者に本心で向き合っているように感じます。知的であることは大前提ですが、素の部分が見えることで親しみやすさが生まれる。そこに気づかせてもらいました。

 ――趣味のうどん巡りについて

 五十嵐 小さい頃からうどんが大好きで、大学時代には香川までうどん旅をしました。福岡でも1日3軒巡るツアーをしたことがあります。福岡市中央区の「天ぷらうどん」の肉えび天うどんが好きです。田川市にも毎週通いたいほど好きな「ちえ福」がおいしいです。

 ――Mrs.GREEN APPLEの魅力は

 五十嵐 大学時代から10年ほど追いかけています。就活など人生の節目で励まされてきました。ライブで大森元貴さんの第一声を聞いた瞬間、涙が出ました。

 ――尊敬する母とはどんな存在か

 五十嵐 私の働く原動力です。育児と仕事を両立する姿を見てきて、超えられない存在だと思っています。アナウンス大賞の表彰式後は母と姉と3人でお祝いしました。

 ――今後の目標は

 五十嵐 高校時代に実感した「言葉の力」を原点に、一人でも多くの人の心を動かせるアナウンサーになりたいです。いつかアナウンサーをやり尽くしたと思える日が来たら、新しいジャンルにも挑戦したいです。英語に打ち込んできたので、もう一度海外へ行き、視野を広げることにも興味があります。